パソコン検証編Part.3-2「CPUクーラー検証レビュー KOTERSU Mark Ⅱ Rev.B」後編
今回はサイズ製の虎徹MarkⅡRev.B後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。
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標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。デュアルファン構成も検証したのでそれぞれ紹介していきます。
シングルファン アイドル
まずはシングルファンから。
ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は24.1W、FAN回転数は438RPM、CPU温度は42℃となりました。今回検証機の構成と設定はアイドル時の消費電力が高くなる設定のためやや高めの温度になっています。(メモリーの設定をXMPからJEDECに変更するのとPCIeのASPMを有効にすると標準レベルの消費電力になります。)
シングルファン Cinebench R23
つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。
負荷がかかっているときの平均値で消費電力は167.8W、FAN回転数は1265RPM、CPU温度は78.4℃となりました。グラフからわかることは、まず赤い丸で囲ったところはサーマルスロットリングが起こっていますね。本来テスト中の消費電力は電力制限により2段階になるはずなのですが、このグラフではPL2を維持できていないのがわかります。グラフ上ではCPU温度が100℃にはなってはいませんが、監視ソフトの記録タイミングにはある程度の間隔があるためその間に100℃になった瞬間があるというわけです。テスト開始後PL2の電力制限で動作していたけれどサーマルスロットリングにより徐々に電力制限、TauによりPL1に切り替わりテスト終了。という流れになっています。サーマルスロットリングが起こるまでの時間は約17秒でしたので本来の電力制限には耐えられないということになります。
一応スコアはこんな感じでした。
シングルファン FF15
つぎはFF15ベンチです。
負荷がかかっているときの平均値で消費電力は74.8W、FAN回転数は851RPM、CPU温度は61.3℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で68.6℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが40.7dBとなりました。スコアはこんな感じです。
デュアルファン アイドル
つぎにデュアルファン。
ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。
中央値で消費電力は24.3W、FAN回転数は420RPM、CPU温度は41℃となりました。
デュアルファン CinebenchR23
つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。
負荷がかかっているときの平均値で消費電力は173.7W、FAN回転数は1265RPM、CPU温度は77.3℃となりました。シングルファン同様赤い丸で囲ったところでサーマルスロットリングが起こっていますね。ただサーマルスロットリングが起こるまでの時間は約20秒とシングルの時より3秒伸びています。どのみち本来の電力制限には耐えられないというのは同じなのですが。一応スコアはこんな感じでした。スコアも伸びてはいますが正直誤差の範囲かなとは思います。
デュアルファン FF15
つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は72.7W、FAN回転数は724RPM、CPU温度は58.7℃となりました。シングルの時よりCPU温度が低くなっていますが、GPU温度は平均値で68.6℃とほぼ変化はありませんでした。騒音値は12回の平均値で40.4dBになりました。これついては後ほど。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。
ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。シングル・デュアルそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
シングルファン
まずはシングルファンから。
約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、87℃、82℃、75℃、70℃、63℃、56℃、47℃となりました。TDP175W以上のテストではTDPと実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。
また175W以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。一番消費電力の高い225Wのテストのみサーマルスロットリングが働いたためこのような推移になっています。実際の消費電力が低いのはこのためです。そしてこの結果から虎徹MarkⅡRev.Bの冷却性能は194Wということもわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、虎徹MarkⅡRev.BのCSs=194Wです。
デュアルファン
つぎにデュアルファン。
中央値は高い順に89℃、86℃、81℃、73℃、67℃、60℃、53℃、45℃となりました。
先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。デュアルファン構成の冷却性能は197Wのようですね。ファンを追加したものをCS+と勝手に呼びますが、虎徹MarkⅡのCS+=197Wです。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。
そのグラフがこちらです。オレンジの点がシングルファン、青の点がデュアルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。デュアルファンは全体的に性能向上がみられますが、若干ですね・・。実際CSs=194W、CS+=197Wと3Wの差なので性能面で見るとデュアルファンの効果はいまいちかなと思います。
FANの回転数を変化させてのテスト
つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
シングルファン
まずはシングルファンから。先ほどのテストでCSs=194Wということが分かったので、CSsを超える負荷をかけられるTDP225Wで測定しています。
どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に194W、189W、186W、183W、179W、170W、159W、139W、105W、60Wとなりました。回転数10%は20%と回転数が変わらなかったため省略しています。回転数0%の結果をCS₀と呼ぼうと思いますので虎徹MarkⅡRev.BのCS₀=60W。また赤い点線でnoctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能を入れてありますが、CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので虎徹MarkⅡRev.BのCSM=198Wとなりました。CSMとCSsの差はそこまで大きくありませんので付属のファンでヒートシンクの性能を十分引き出せているように思います。
デュアルファン
つぎにデュアルファン構成。
CS+=197WだったのでこちらもTDP225Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に197W、193W、191W、192W、187W、186W、179W、164W、124W、60Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=198Wです。デュアルファンでは上の方が重なってきていますね。かなりCSMとの差が小さくなっていますのでやはり付属ファンで十分かなと思います。
回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るにシングルファンでは回転数に応じて性能が上がっていますが、デュアルファンの方は回転数40%の時点でほぼ平らなグラフになっています。また傾向線どうしの差が一番大きいのは30%あたりですので回転数が高いときより低い時の方がデュアルファンの恩恵が大きいこともわかりますね。
そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線は緩やかなカーブを描いていますね。デュアルファン構成はシングルファンの時より回転数が少し低いため傾向線が若干ずれていますが差は3%くらいなので個体差の範囲内かなと思います。
デュアルファンなのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。
騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、なんとなくこんなカーブを描いているんじゃないでしょうか。騒音値は回転数が高くなるとかなりの角度で上昇していくのが予測できますね。
ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が40dBを超えていたのですが、ベンチ中のCPUクーラーの回転数を考えると騒音値は最大でも34.4dBほどだったことがこのグラフからわかります。つまりゲーム中の騒音値はCPUクーラーの騒音値ではなく、ほぼグラボの騒音値によるものだったということになります。
話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。
さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。このグラフをパッと見ただけでは回転数50%前後がよさそうっと思ってしまいますが、もう少し回転数を上げてもぜんぜん大丈夫だと思います。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、シングルファンでは回転数を少し抑えるといいかなと思います。わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、虎徹MarkⅡRev.BのCSLN=187Wです。
デュアルファンの方はさすがに40dBを超えてくるので100%だとうるさい印象ですが、こちらも回転数を80%に抑えれば十分静かになります。今までの結果からもわかるように性能向上はあまり大きくありませんので、デュアルファン構成のメリットは性能アップではなく性能を維持しながらファンの回転数を落とせること、つまり静穏化のためのファン増設と考えましょう。性能を維持しつつ最大で-2dBほど静穏化ができますのでぜひチューニングしてみてください。
さきほどおすすめした「シングルファンで回転数を抑える」という点。すでにお気付きの方もいるかもしれませんが、これをすると性能的にも騒音値的にも実は前モデルの虎徹MarkⅡと大差がなくなります。(若干ファンの回転数が高い程度)つまり前モデルの虎徹MarkⅡの時点で完成された製品だったということですね。高回転のFANを採用している強力なライバル製品がいくつも登場していますので、同じようにFANの回転数を上げることで少しでも冷却性能を上げて対抗しようとしたのかもしれませんが、正直ファンは前のままでよかったのでは・・・静かで冷える虎徹はどこにいったの・・?という感じが否めません。詳しい性能比較は比較動画を作る予定なので今は触れませんが、ファンの調整が必要になった分前モデルより扱いにくくなったなぁというのがわたしの感想です。
ファンを統一してのテスト
そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。FAN回転数0%での負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。10分間のテストでは温度が一定になるところまではいけませんでしたが、CS₀=60Wだったのでこのまま負荷をかけ続ければおそらく100℃に達してしまうんじゃないかなと思います。
以上で結果の紹介は終わりです。
最後に性能をまとめたグラフを1画面にまとめておきました。またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
忘れてはならないのはこれらの結果はあくまでわたしの検証環境での結果です。消費電力も温度も使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット
デメリット
おすすめ度
AMaGiのおすすめ度は☆4
とりあえずこれを買っておけば大丈夫と安心しておすすめできる製品の1つです。
前モデルと比べると騒音値と静穏性のバランスが悪くなりましたが、値段と性能のバランスはよく、どのお店に行っても常に在庫があるのもおすすめポイント。干渉もあまり気にする必要もないです。
MiniITXでは背面チップに注意しましょう。
この動画を作っている最中に終売になってしまいましたが、後継モデルは虎徹MARK3が発売されています。https://amzn.to/3YCjgZ1
説明欄に商品のリンクを貼っておきますので気になる方は購入して試してみてください。
ほかにも話したいことはたくさんあったのですが、重要なところを中心にまとめたつもりです。わたし自身なんでこんなに長くなるんだろといつも思っていますが、ほかの製品もこんな感じで徹底的に紹介・検証していきますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは今回の動画はこの辺で終わりたいと思います。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。
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