パソコン検証編Part.3-3「CPUクーラー検証レビュー AK400」後編

今回はDeepCool製のAK400後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。


標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。デュアルファン構成も検証したのでそれぞれ紹介していきます。
シングルファン アイドル


まずはシングルファンから。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は24.9W、FAN回転数は550RPM、CPU温度は42℃となりました。今回検証機の構成と設定はアイドル時の消費電力が高くなる設定のためやや高めの温度になっています。(メモリーの設定をXMPからJEDECに変更するのとPCIeのASPMを有効にすると標準レベルの消費電力になります。)
シングルファン Cinebench R23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は169.5W、FAN回転数は1395RPM、CPU温度は76.6℃となりました。グラフからわかることは、まずサーマルスロットリングが起こっていますね。本来テスト中の消費電力は電力制限により2段階になるはずなのですが、このグラフではPL2を維持できていないのがわかります。グラフ上ではCPU温度が100℃にはなってはいませんが、監視ソフトの記録タイミングにはある程度の間隔があるためその間に100℃になった瞬間があるというわけです。テスト開始後PL2の電力制限で動作していたけれどサーマルスロットリングにより徐々に電力制限、TauによりPL1に切り替わりテスト終了。という流れになっています。サーマルスロットリングが起こるまでの時間は約23秒でしたので本来の電力制限には耐えられないということになります。一応スコアはこんな感じでした。

シングルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は76.0W、FAN回転数は939RPM、CPU温度は63.5℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で68.2℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが40.7dBとなりました。スコアはこんな感じです。
デュアルファン アイドル

つぎにデュアルファン。AK400にはファン追加用のワイヤーが付属しておらず、標準で付属しているファンも単品販売されていないため、AK620に付属のFANで代用しています。一見同じようなFANなのですが、見た目が違うので統一感がないのが残念です。


ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は24.1W、FAN回転数は520RPM、CPU温度は41℃となりました。
デュアルファン CinebenchR23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は173.7W、FAN回転数は1431RPM、CPU温度は75.8℃となりました。シングルファンのときにはサーマルスロットリングが起こっていましたが、デュアルファンではサーマルスロットリングは起こっていません。ただTauが本来と違う挙動のためこの結果だけではなんとも言えません。一応スコアはこんな感じでした。スコアも伸びてはいますが正直誤差の範囲かなとは思います。
デュアルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は76.4W、FAN回転数は918RPM、CPU温度は61.5℃となりました。シングルの時よりCPU温度が低くなっていますが、GPU温度は平均値で68.5℃とほぼ変化はありませんでした。騒音値は12回の平均値で40.7dBになりました。これついては後ほど。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。シングル・デュアルそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
シングルファン


まずはシングルファンから約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、86℃、82℃、77℃、71℃、63℃、56℃、47℃となりました。175W以上のテストでは電力制限と実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。


また175W以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。一番消費電力の高い225Wのテストのみサーマルスロットリングが働いたためこのような推移になっています。実際の消費電力が低いのはこのためです。そしてこの結果からAK400の冷却性能は197Wということもわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、AK400のCSs=197Wです。
デュアルファン

つぎにデュアルファン。中央値は高い順に89℃、84℃、80℃、75℃、67℃、61℃、53℃、45℃となりました。先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。デュアルファン構成の冷却性能は206Wのようですね。ファンを追加したものをCS+と勝手に呼びますが、AK400のCS+=206Wです。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。

そのグラフがこちらです。オレンジの点がシングルファンの青い点がデュアルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。デュアルファンは全体的に性能向上がみられCSs=197W、CS+=206Wと10W近い差がありますので、デュアルファンの効果は感じられると思います。
FANの回転数を変化させてのテスト

つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
シングルファン
まずはシングルファンから。先ほどのテストでCSs=197Wということが分かったので、CSsを超える負荷がかけられるTDP225Wで測定しています。

これも結果を1つのグラフにまとめてみました。どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に197W、197W、194W、189W、186W、179W、164W、144W、111W、35Wとなりました。回転数10%は20%と回転数が変わらなかったため省略しています。回転数0%の結果をCS₀と呼ぼうと思いますのでAK400のCS₀=35W。また赤い点線でnoctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能を入れてありますが、CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので、AK400のCSM=205Wとなりました。
デュアルファン

つぎにデュアルファン構成。CS+=206WだったのでこちらもTDP225Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に206W、204W、204W、201W、196W、189W、178W、163W、141W、35Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=205Wです。デュアルファンでは上のほうが重なってきていますね。CSMとの差はありませんので付属ファンでヒートシンクの性能を十分引き出せていると思います。

回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るに回転数に応じて性能は上がっていますが、回転数が高くなるにつれてほぼ平らなグラフになっています。また傾向線どうしの差が一番大きいのは20%あたりですので回転数が高いときより低い時のほうがデュアルファンの恩恵が大きいこともわかりますね。

そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線はほぼ直線を描いていますね。シングルファンとデュアルファンで回転数が若干違うため傾向線がややずれていますが差は2%くらいなので誤差の範囲内かなと思います。デュアルファンなのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。

騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、なんとなくこんなカーブを描いているんじゃないでしょうか。騒音値は回転数が高くなるとかなりの角度で上昇していくのが予測できますね。

ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が40dBを超えていたのですが、ベンチ中のCPUクーラーの回転数を考えると騒音値は最大でも35dBほどだったことがこのグラフからわかります。つまりゲーム中の騒音値はCPUクーラーの騒音値ではなく、ほぼグラボの騒音値によるものだったということになります。

話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。

さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。このグラフをパッと見ただけでは回転数50%前後が良さそうっと思ってしまいますが、もう少し回転数を上げてもぜんぜん大丈夫だと思います。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、シングルファンでは回転数を少し抑えるといいんじゃないかなと思います。わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、AK400のCSLN=194Wです。
デュアルファンの方はさすがに40dBを超えてくるのでうるさい印象ですが、こちらも回転数を80%以下に抑えれば十分静かになります。デュアルファン構成にすると性能をあげることができますが、デュアルファンの最大のメリットは性能アップではなく性能を維持しながらファンの回転数を落とせること、つまり静穏化です。性能を維持しつつ最大で-3dBほど静穏化ができますので自分の好みにチューニングしてみてください。
シングルファンでも100%回転時に38dBを若干超えてしまっているのがおしいなぁという感じなのですが、それ以上に残念な点が1つあります。

それは温度変化で嫌な音がするんです。検証中に何度もパキッって音がして最初はなんなのかわからなかったのですが、おそらく原因はプラスチックのカバーだと思います。このカバーは爪とねじで固定されているのですが、金属とプラスチックの熱膨張率の違いで変形が生じ、固定が若干ずれる際に音が鳴っているんだと思います。たまに鳴る程度なのですが、はじめは何かパーツが壊れたんじゃないかとめちゃくちゃ不安になりましたw カバーを外したら鳴らなくなったのでおそらく間違ってはないんじゃないかなと思います。カバー自体の見た目は好きなのですが、そのせいで音が鳴るのはちょっと・・ それならカバーはいらないかなとも思います。

あともう一つ気になったのが、デュアルファン構成時の共鳴や共振です。ファン増設用のワイヤーは付属していないので本来の使い方ではないですが、回転数90%前後で二つのファンが共鳴したようなうねり音がするため見かけの騒音値以上に動作音が気になります。さらに個体差もあるかもしれませんが、付属ファンの振動がやや強めで高回転時にファンの振動がヒートシンク本体に伝わり共振がおこります。手で触って確認しただけなのでわたしの感覚による判断ですが、他のメーカーのファンよりも振動が大きいように感じました。原因をいろいろ考えてみましたが、ファンのクオリティがいまいち、ヒートシンクへの固定が弱すぎる、防振ゴムが薄いもしくはこれらの複合なのかなと思います。共振はシングルファンでも起こっていましたがシングルファンの時は無視できる程度ですみます。そのためAK400はシングルファンでの使用を推奨です。デュアルファンにする場合回転数を抑えるか、防振ゴムを挟むなどなにかしら対策をした方がいいかなと思います。
FANレスのテスト

そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。FAN回転数0%での負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。ファンレスでは思ってたよりも冷えず、サーマルスロットリングにより最終的に37Wまで消費電力が下がっています。CS₀も35Wだったのでヒートシンク自体の放熱性はあまりよくないようです。
ただファンレス用に設計されているわけではありませんし、このあたりはほかの製品と比較しながらのほうが分かりやすいので詳しくは別の動画・ブログで考察します。
以上で結果の紹介は終わりです。


最後に性能をまとめたグラフを1画面にまとめておきましたので、よりじっくり見たい人はこの画面をスクショしておいてください。またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
そして重要なのはこの結果はあくまで検証環境での結果です。温度は使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット

デメリット

おすすめ度

※AMaGiのおすすめ度は☆1(干渉なしなら☆4)
まず最初に断っておきますが、バックプレートの干渉が致命的なため、注意喚起もこめてこの評価としました。干渉で取り付けられないならまだましだったのですが、最悪マザーボードを壊してしまいますのであまりにも致命的です。くれぐれも注意してください。
ただ干渉する製品は一部の製品に限られるため干渉を除けば☆4かなと思います。
ファンの振動などちょっと気になる点はありますが、値段と性能のバランスがよく、干渉さえなければ、とりあえずこれを買っておけば大丈夫と安心しておすすめできる製品の1つだったので、本当にもったいないです。現状第1候補になる製品かなと思いますのでバックプレートの問題が早急に改善されることを願っています。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。
出来る限りいろんなことを検証したいと思っているのですが、基本自腹で検証をやっているため金銭的にも時間的にも限界があります。動画説明欄にAmazon欲しいものリストのリンクを貼っていますので、もし応援して下さる方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
