Bluetoothの音楽用コーデックのお話

Bluetoothイヤホンといえばコーデックの話は欠かせないですよね。
いろんな解説サイトがありますが、ほとんどのサイトで数値の大きい小さいの良し悪ししか書いていないので、わたしなりにまとめを作りました。

※AMaGi調べなので間違っている可能性もあります
※他にも音楽用コーデックはたくさんありますが、代表的なものをピックアップしています
ビット深度(bit)とサンプリングレート(kHz)


CD:16bit/44.1kHz ハイレゾ:CD相当(16bit/48kHz)を超えるもの
サンプリングレートは時間当たりの分解能、ビット深度はサンプリングの精度です。
どちらも数値が大きくなるほど分解能が高くなり音がリアルになりますが、音の波形上、低域よりも変化の大きい高域のほうが影響を大きく受けます。
サンプリングレートは録音可能な最高周波数にも影響しますが、CDの44.1kHzの時点で可聴域はカバーできているので、サンプリングレートをあげる目的は聞こえない高域を録音するためではありません。
サンプリングレートが高いほうが可聴域(高域側)ギリギリまでよりいい音で録音できます。高域の分解能をあげるのが目的です。
数値が大きい=高音質ですが、それは帯域に制限がないときの話。
数値が大きい=高音質=容量が大きくなります。Bluetoothのように帯域に限りがある場合は高音質にするとその分圧縮率を高くする必要があるため、ワイヤレスイヤホンではあまり気にしなくていいと思っています。
さらに突き詰めると音にこだわると行きつく先の1つにビットパーフェクトというのがあるのですが、AndroidではSRCにより強制ダウンコンバートされるのが現状なので、普通のスマホではビットパーフェクトを気にしだすと障壁が多いです。(Xperiaはこの問題を回避しているらしい?)
ちなみにAndroid14以降でUSB DACならSRC回避が可能になったと聞いたのでいくつかDACを試してみましたが、ストリーミング系のアプリはアプリ自体が対応していないせいでネゴシエーションがバラバラになります。ファイル本来のビット深度やサンプリングレートより高いレートでリンクしてしまいました。
高レートのほうがいいだろうと思う人もいるかもしれませんが、高レートが効いてくるのは音源をミックスしたりエフェクトをかけたりといった音楽制作の場面だと思います。単に音楽を聴く分にはDACだけが高レートでもあまり意味はないと思います。
現状ではOS/スマホメーカー/アプリ開発元の足並みが揃っていないのでスマホで効果が実感できるかは微妙ですね。結局のところ、音にこだわるのであればDAPといいイヤホンを買ってローカル再生した方が絶対に幸せになれます。
ビットレート


転送速度(帯域)です。Bluetoothコーデックにおいて音切れしないために必要となる速度です。
ビットレートが高いほどより大きなデータを送れるため高音質を目指せますが、その分干渉の影響を受けやすくなり通信が不安定になりやすいです。安定性向上のため高ビットレート対応のコーデックは可変ビットレートになっており、通信環境に応じて自動的にフォールバックされます。
また必ずしもビットレートの数値=音質ではありません。同じビットレートでもコーデックの種類により圧縮率や処理が異なるため音質は変化します。
ちなみにCDのビットレートは約1.4Mbpsなので、ビットレートの数値だけで見るとどのコーデックもCD以下で、それにもかかわらずハイレゾ対応と謳っていることになります。
遅延
ほとんどのサイトで遅延を明記して比較していますが、わたしのサイトではあえて表記していません。というのもメーカーの実装(バッファーの量や処理過程)により実際の遅延は大きく異なるため規格上の数値は全くあてになりません。検索して出てくる遅延の数値もバラバラで参考になりません。ビットレートが高いものほど、バッファーをしっかりとる必要があるため遅延が大きくなる傾向にあります。
~大雑把な目安です~
・通常のビットレート(300kbpsくらい)
動画を違和感なく視聴可能。(~約100ms)ゲームもものによっては可能。(~約50ms)
・高音質(600kbpsくらい)
動画を違和感なく(~約100ms)~我慢できる程度で視聴可能。ゲームは厳しい。
・さらに高音質(900kbpsくらい)
音楽専用です。動画には向きません。
※遅延に関しては厳密な遅延テストではなく、実使用においてどの程度遅延を感じるかに焦点を当てています。記事内の遅延の数値はYoutube動画視聴時の遅延のためコーデック自体の遅延とは異なります。遅延の感じ方はアプリによっても変わってきます。
残念なことにほとんどのメーカーでコーデックを指定(制限)することができません。
より新しいコーデックが自動的に選択されるため、接続されるコーデックで遅延するイヤホンを避けることが重要です。
自動接続の優先順位:LDAC>aptX>AAC>SBC
(LDAC等一部のHDオーディオは手動で有効する必要があるスマホもあります)
Androidは開発者モードでコーデックを指定することもできますが、接続するたびに指定しなおす必要があるため実用的ではありません。ぜひ各メーカーのアプリにコーデックを制限もしくは指定する機能を実装して欲しいですね。
(写真はShanlingというメーカーのDACを管理するアプリ)

実際に感じたコーデックの傾向
わたしがこれまでいろいろ試して感じたコーデックの傾向です
SBC:
音質も十分。遅延も大きくなくド安定。
AAC:
低ビットレートでも音がいいのが特徴らしいけど、イヤホン側の問題で遅延する製品が多いことが問題。
ほとんどのサイトでSBCより低遅延と書いていますが嘘です。AACのほうがSBCより遅延が大きくなることがほとんどです。
SBCとAACに対応しているイヤホンはAACで自動的につながるため購入前に要確認!
aptX系:
高域がノイジーでAACほどじゃないけどイヤホン側の問題で大きく遅延する製品もある。音質面からできれば避けたい。(最新のadaptiveでは改善しています)
低遅延モードの遅延の小ささは価値あり。(LC3が普及すると価値は下がりそう)
LDAC:
高音質といわれればそうかも?程度。そこまで付加価値があるようには思えません。
高ビットレートを指定すると遅延が大きい。音質にこだわるなら確実に有線イヤホンが優勢。
LHDC、LC3:
LHDCは1製品しか、LC3は対応製品を持っていないため未評価。
何度もブラインドテストをしましたが、aptXの高域ノイズ以外明確な差を感じることはできませんでした。コーデックは正直SBCでもよくない?というのが感想です。
SBCは音が悪いと書かれがちですが、確かにBluetoothの初期のころはビットレートも低く音が悪かったです。でも今はブラインドテストではほかのコーデックと判別ができないくらいには高音質になっています。AACは遅延する製品が多いし、aptXはノイズが乗るし、LDACも高ビットレートでは遅延が大きいしで、SBCが一番不満なく使える気がします。さすがは標準コーデック。音質求めるなら有線イヤホンにするし…、Bluetoothイヤホンには便利さや手軽さを求めるので…結局のところSBCでいい(SBCがいい)と思います。
LE Audioの登場で今後各社コーデックの見直しが進むのと思うので、今後の進化に期待しています!
まとめ
コーデックについて細かく書きましたが、音質も遅延もコーデックよりもスマホやイヤホンによる部分が圧倒的に大きいです。
音質に関して一番ひどかった機種はXiaomi Mi11 Lite 5Gで、どのコーデックにもノイズがのり、高速にビブラートしたような音になります。遅延もAACではとある機種では50msくらいなのに別の機種では100msを超える、でもSBCにすると逆転する。など機種によって傾向が変わってくる場合があります。
さらにイヤホン側の問題で特定のコーデックだけ大きく遅延する(特にAACに多い)ものもいっぱいあります。それなのにそういったことに言及しているレビューは少ないですよね。
わたしがテストに使用したリンクをページ下部にまとめてありますので、これを機にぜひ手元のBluetoothイヤホンで試してみてください。
音に関してはドライバーの種類や性能、チューニングによるところが大きいので、開発コストや製造コストがやはり値段に反映されていきます。
完全ワイヤレスイヤホンでは本体サイズ、バッテリー容量、通信帯域などの制約が大きいため、音に関しては限界があります。
1万円台までは値段に応じて明確に音が良くなっていく印象ですが、数万円クラスになってくると好みの問題になってくるので、それならDAPやDACに手を出した方が面白いんじゃないかなと思います。
個人的にイヤホン選びで最も重視しているところは耳へのフィット感です。少し奮発したイヤホンがこんなものかと感じる場合は単純に耳にしっかりと合っていないだけの場合も多いです。最近は付属のイヤーチップまでこだわっている製品も増えていますが、イヤーチップをサードパーティ製のものに交換すると、おお!ってなることもあります。(完全ワイヤレスの場合イヤーチップを交換するとケースに収納できなくなる場合があるので注意)
最終的な音の良し悪しは個人の好みになってくるので、一度試してから購入するのを強くおすすめします。
音質や遅延のチェックに使用したサイトやアプリ
・周波数テストやダイナミックレンジのテスト等
https://www.audiocheck.net/
オーディオテスター(オーディオテストアプリ)
・遅延テスト
https://www.youtube.com/watch?v=K0uxjdcZWyk&t=96s
Perfect Piano(ピアノアプリ)
オーディオテスター(オーディオテストアプリ)
・その他J-POPやクラシック、ジャズの視聴
Poweramp(音楽プレーヤー)
Amazon Music(ストリーミング)
aptXは本当に高音質ですか?あなたのイヤホンはAACで大きく遅延していませんか?