パソコン検証編Part.3-10「CPUクーラー検証レビュー NH-U12A」後編

今回はNoctua製のNH-U12A後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。



標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。シングルファン構成での検証もしたのでそれぞれ紹介していきます。
デュアルファン アイドル


まずは標準構成から。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は24.3W、FAN回転数は489RPM、CPU温度は41℃となりました。今回検証機の構成と設定はアイドル時の消費電力が高くなる設定のためやや高めの温度になっています。(メモリーの設定をXMPからJEDECに変更するのとPCIeのASPMを有効にすると標準レベルの消費電力になります。)
デュアルファン Cinebench R23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は168.6W、FAN回転数は1482RPM、CPU温度は71.4℃となりました。消費電力がきれいな2段階のグラフになっており、サーマルスロットリングはおこっていないことがわかりますね。最高温度は88℃でしたが本来の電力制限でもギリギリ問題ないように感じます。一応スコアはこんな感じでした。
デュアルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は75.2W、FAN回転数は894RPM、CPU温度は61.3℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で67.8℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが40.0dBとなりました。スコアはこんな感じです。
シングルファン アイドル


つぎにシングルファン。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は23.7W、FAN回転数は776RPM、CPU温度は40℃となりました。
シングルファン CinebenchR23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は166.6W、FAN回転数は1487RPM、CPU温度は71.8℃となりました。シングルファンでもサーマルスロットリングはおこっておらず温度もデュアルファンのときとくらべて大きく上昇はしていませんが、テスト時間が短いためなんとなくの感覚ですがMTPで長時間負荷がかかるとサーマルスロットリングが起こりそうな気がします。一応スコアはこんな感じでした。
シングルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は109.6W、FAN回転数は1260RPM、CPU温度は70.6℃となりました。デュアルファン構成よりもCPU温度が9℃高くなっていますが、消費電力の差も大きいため単純な比較はできません。GPU温度は平均値で69.2℃で、騒音値は12回の平均値で40.4dBとなっています。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。標準構成・シングルファンそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
デュアルファン


まずは標準構成から約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、89℃、82℃、78℃、74℃、68℃、61℃、54℃、45℃となりました。200W以上のテストでは電力制限と実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。

また175W以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。そしてこの結果からNH-U12Aの冷却性能は223Wということがわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、NH-U12AのCSs=223Wです。
シングルファン

つぎにシングルファン。中央値は高い順に89℃、89℃、83℃、81℃、75℃、71℃、63℃、54℃、45℃となりました。となりました。先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。シングルファン構成の冷却性能は212Wのようですね。ファンを減らしたものをCS-と勝手に呼びますが、NH-U12AのCS-=212Wです。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。

そのグラフがこちらです。オレンジの点が標準構成、青い点がシングルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。シングルファンは全体的に性能が低下していますが、CSs=223W、CS-=212Wと11Wも差がありますのでファンが減ることの代償はそれなりにあります。
FANの回転数を変化させてのテスト
つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
デュアルファン


まずは標準構成から。先ほどのテストでCSs=223Wということが分かったので、CSsを超える負荷が安定してかけられるTDP250Wで測定しています。
どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に223W、219W、216W、213W、206W、199W、183W、167W、128W、95W、51Wとなりました。
回転数は14%までしか下がらなかったため10%は省略しています。回転数0%の結果をCS₀と呼ぼうと思いますのでNH-U12AのCS₀=51W。また赤い点線は本来noctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能なのですが、この製品はそれが標準ですので100%負荷と同じグラフになっています。同じものですが便宜上CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので、NH-U12AのCSM=223Wとなります。当然CSsと同じです。
シングルファン

つぎにシングルファン構成。CS-=212WだったのでCS-を超える負荷が安定してかけられるTDP250Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に212W、209W、204W、198W、191W、182W、162W、142W、101W、75W、51Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=223Wです。シングルファンではかなりグラフが下にさがりましたね。

回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るに回転数に応じて性能は上がっていますが、回転数が高くなるにつれてほぼ平らなグラフになっています。また傾向線どうしの差は回転数が低いほど大きいですのでシングルファンでも回転数を維持すれば性能への影響は少なくできます。

そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線は直線になりました。標準構成とシングルファンで回転数が若干違うため傾向線がややずれていますが差は1%以下なので誤差の範囲内かなと思います。ファンの数が違うのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、回転数に対し指数関数的に増加しているのがわかりますね。

ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が40dBほどだったのですが、ベンチ中のCPUクーラーの回転数を考えると騒音値は最大でも35dBほどだったことがこのグラフからわかります。つまりゲーム中の騒音値はCPUクーラーの騒音値ではなく、ほぼグラボの騒音値によるものだったということになります。

話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。

さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、標準構成でファン100%回転時はすこしうるさいです。回転数を90%以下に抑えれば十分静かになりますし、70%まで抑えるとめちゃくちゃ静かになります。
わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、NH-U12AのCSLN=213Wです。

NH-U12AにはLNAが付属しており、これを使用すると最大回転数を80%に抑えることができます。延長ケーブルのようにかますだけで簡単に静穏化ができますのでおすすめです。
シングルファンでも100%回転時は36dBを超えてきますのでちょっとだけ動作音が気になります。こちらも回転数を少し抑えれば静かになりますが、CS-=212Wなのに対しCSLN=213Wとほぼ同じ数値ですので、騒音値だけでみると静穏性のためにシングルファンにするのはあまりいい手段とはいえないかもしれませんね。デュアルファンで回転数を抑えるほうがいいかなと思います。とはいえわずかな差なのでシングルにして余ったほうをケースのリアファンに使って排気を強化するという使い方もありなのかなと思います。
FANレスのテスト

そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。FAN回転数0%での負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。10分間のテストではサーマルスロットリングは発生しませんでしたが、このままテストをしていればサーマルスロットリングが起こるのはあきらかです。
CS₀=51Wでしたのでヒートシンク自体の性能はそこまで高くないようです。ただファンレス用に設計されているわけではありませんし、このあたりはほかの製品と比較しながらのほうが分かりやすいので詳しくは別の動画、記事で考察します。
以上で結果の紹介は終わりです。


最後に性能をまとめたグラフを1画面にまとめておきましたので、よりじっくり見たい人はこの画面をスクショしておいてください。またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
そして重要なのはこの結果はあくまで検証環境での結果です。温度は使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット

デメリット

おすすめ度

※AMaGiのおすすめ度は☆3.5
冷却性能が高く、シングルタワーでありながらデュアルタワーのCPUクーラーと同等以上のポテンシャルがあります。いろんなCPUクーラーを検証して何よりも強く感じたのはNoctuaのファンのクオリティの高さです。100%回転時はややうるさいという評価にはなりましたが、回転数2000rpmが2つと考えると他の製品ではなかなか考えられない静かさだと思います。ほかの製品によくみられる高回転時の振動もほとんどなく、感動すら覚えるレベルでした。
評価には値段などいろいろなことを考慮していますのでやはり値段がネックになりますが、ソケット変更時のサポートも手厚いメーカーですので値段に見合った価値のある製品だと思います。本当なら☆5にしたいくらいなのですが、CPUクーラーに1万3千円は高いと思うのが普通の感覚だと思いますし、水冷も視野に入ってくる値段ですのでこのあたりは予算や水冷の好き嫌いによって評価が分かれるところだと思います。ただ少なくとも一番いいクーラーはどこのメーカーかと聞かれれば迷わずNoctua!と言い切れるほどにおすすめです。
ただし、わたしはこの先机の傷を見るたびにこの製品を思い出すことになりそうですw
説明欄に商品のリンクを貼っておきますので気になる方は購入して試してみてください。
ほかにも話したいことはたくさんあったのですが、重要なところを中心にまとめたつもりです。ほかの製品もこんな感じで徹底的に紹介・検証していきますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは今回はこの辺で終わりたいと思います。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。

