パソコン検証編Part.3-12「CPUクーラー検証レビュー Assassin Spirit120 / Assassin Spirit PLUS」後編

今回はThermalright製のAssassinSpirit120とAssassinSpirit120PLUS後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。




標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。シングルファン構成での検証もしたのでそれぞれ紹介していきます。
デュアルファン アイドル


まずは標準構成から。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は26.8W、FAN回転数は741RPM、CPU温度は38℃となりました。今回検証機の構成と設定はアイドル時の消費電力が高くなる設定のためやや高めの温度になっています。(メモリーの設定をXMPからJEDECに変更するのとPCIeのASPMを有効にすると標準レベルの消費電力になります。)
デュアルファン Cinebench R23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は174.4W、FAN回転数は1254RPM、CPU温度は74.5℃となりました。消費電力がきれいな2段階のグラフになっており、サーマルスロットリングはギリギリですが起こっていませんでした。これ以上長く負荷をかけるとサーマルスロットリングが起きそうですので本来の電力制限では耐えれそうにありません。一応スコアはこんな感じでした。
デュアルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は109.7W、FAN回転数は1068RPM、CPU温度は67.4℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で68.8℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが41.2dBとなりました。スコアはこんな感じです。
シングルファン アイドル


つぎにシングルファン。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は26.6W、FAN回転数は727RPM、CPU温度は39℃となりました。
シングルファン CinebenchR23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は178.1W、FAN回転数は1276RPM、CPU温度は76.5℃となりました。シングルファンでもサーマルスロットリングは起こっておらず温度もデュアルファンの時とくらべて大きく上昇はしていませんが、やはり本来の電力制限では耐えれそうにありません。一応スコアはこんな感じでした。
シングルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は109.1W、FAN回転数は1118RPM、CPU温度は69.2℃となりました。GPU温度は平均値で67.8℃で、騒音値は12回の平均値で40.4dBとなっています。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。標準構成・シングルファンそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
デュアルファン


まずは標準構成から約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、88℃、81℃、74℃、68℃、60℃、51℃、41℃となりました。200W以上のテストでは電力制限と実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。

また200以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。そしてこの結果からAssassinSpirit120PLUSの冷却性能は202Wということがわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、AssassinSpirit120PLUSのCSs=202Wです。
シングルファン

つぎにシングルファン。中央値は高い順に89℃、89℃、84℃、77℃、70℃、62℃、52℃、42℃となりました。となりました。先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。シングルファン構成の冷却性能は193Wのようですね。ファンを減らしたものをCS-と勝手に呼びますが、AssassinSpirit120PLUSのCS-=193Wです。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。

そのグラフがこちらです。オレンジの点が標準構成、青い点がシングルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。シングルファンは全体的に性能が低下していますが、CSs=202W、CS-=193Wと10W近く差がありますのでファンが減ることの代償はそれなりにあります。
FANの回転数を変化させてのテスト
つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
デュアルファン

まずは標準構成から。先ほどのテストでCSs=202Wということが分かったので、CSsを超える負荷が安定してかけられるTDP225Wで測定しています。どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に202W、200W、199W、198W、193W、189W、184W、179W、169W、156W、127W、45Wとなりました。
本来回転数0%はファンレスでのテストだったのですが、この製品に付属のファンはマザーボードのファンコンで0%まで徐々に回転数が下がってしまうため、表記は0%ですが、ファンは動いているというややこしい状態が出来上がっています。ファンレスはファンレスとして別に表記していますのでご注意ください。ファンが回転していない状態の結果をCS₀と呼ぼうと思いますのでAssassinSpirit120PLUSのCS₀=45W。また赤い点線はnoctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能を入れてありますが、CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので、AssassinSpirit120PLUSのCSM=204Wとなります。CSsとほぼ同じ数値ですので付属ファンでしっかりと性能はでていますね。
シングルファン

つぎにシングルファン構成。CS-=193WだったのでCS-を超える負荷が安定してかけられるTDP225Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に193W、193W、190W、187W、187W、182W、175W、167W、157W、141W、108W、45Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=204Wです。シングルファンではかなりグラフが下にさがりましたね。

回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るに回転数に応じて性能は上がっていますが、回転数が高くなるにつれてほぼ平らなグラフになっています。また傾向線どうしの差は回転数が低いほど大きいですのでシングルファンでも回転数を維持すれば性能への影響は少なくできます。

そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線はわずかに曲線になりました。標準構成とトリプルファンで回転数が若干違うため傾向線がややずれていますが差は1%以下なので誤差の範囲内かなと思います。ファンの数が違うのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、回転数に対し指数関数的に増加しているのがわかりますね。

ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が40dBを超えていたのですが、ベンチ中のCPUクーラーの回転数を考えると騒音値は最大でも36dBほどだったことがこのグラフからわかります。つまりゲーム中の騒音値はCPUクーラーの騒音値ではなく、ほぼグラボの騒音値によるものだったということになります。

話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。

さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。
これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、標準構成でファン100%回転時はすこしうるさいです。回転数を80%以下に抑えれば十分静かになりますし、70%まで抑えるとめちゃくちゃ静かになります。わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、AssassinSpirit120PLUSのCSLN=198Wです。
シングルファンでも100%回転時は36dBを若干超えてきますのでちょっとだけ動作音が気になります。こちらも回転数を少し抑えれば静かになりますが、CS-=193Wなのに対しCSLN=198Wと逆転していますので、騒音値だけでみると静穏性のためにシングルファンにするのはあまりいい手段とはいえないかもしれませんね。
デュアルファンで回転数を抑えるほうがいいかなと思います。とはいえそこまで大きな差ではないのでシングルにして余ったほうをケースファンとして利用してエアフローを強化するという使い方もありなのかなと思います。
FANレスのテスト

そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。ファンレスでの負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。10分間のテストではサーマルスロットリングが発生し最終的に消費電力が45Wまで落ちています。CS₀も45Wでしたのでヒートシンク自体の性能はそこまで高くないようです。ただファンレス用に設計されているわけではありませんし、このあたりはほかの製品と比較しながらのほうが分かりやすいので詳しくは別の動画で考察します。
以上で結果の紹介は終わりです。


最後に性能をまとめたグラフを1画面にまとめておきましたので、よりじっくり見たい人はこの画面をスクショしておいてください。またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
そして重要なのはこの結果はあくまで検証環境での結果です。温度は使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット

デメリット

おすすめ度

※AMaGiのおすすめ度は☆2
まずThermalright製品に関しては注意点があるのですが、PCパーツ専門店など国内の代理店経由で買うのかアマゾンで買うのかで価格が大きく異なります。アマゾンでは現在ドリス電子科学技術有限会社といういかにも怪しいお店が格安でThermalright製品を売っているのですが、このお店はもともとこのような名前でした。(深圳市德瑞斯电子科技有限公司)この会社はThermalrightの中国国内での正規代理店リストにのっていますので、偽りがなければ製品は本物ということになります。中国の代理店が日本で直接販売するのはルール上大丈夫なの?という疑問はありますが、国内正規流通品ではありませんのでサポート面などは期待しないようにしましょう。あまりにも安いため代理店の名前を語っているだけのお店という可能性やそもそも偽物なんじゃ・・という可能性はぬぐえませんのでこのお店から購入する場合は自己責任で購入してください。個人的には正規品のラインナップが少なすぎるのとここまで安いなら万が一偽物でも納得できるのでありかなとは思いますが、できれば正規品を購入するのをおすすめします。
わたしはこの製品をアマゾンのお店から購入したためその値段、3000円での評価となりますが、値段に対する性能はかなりよく、干渉もよほど特殊な構成でなければ起こらないとおもいますので、製品自体は☆4でもいいくらいいい商品だと思います。
後ろのファンの固定が男の人に手伝ってもらわないとできなかったので設計的にどうなのと思うところもありましたが、シングルファンでも十分冷えますのでコスパはかなり優秀です。ただやはり販売経路に訳ありなのでおすすめはしづらいですね。正規に流通しているライバル製品と比べてもそこまでメリットが大きいわけではありませんので、ライバル製品の正規品を購入したほうが安心して長く使用できるんじゃないでしょうか。リスクは承知で少しでもコスパを重視したいときに選ぶ製品かなと思います。
動画制作中に終売になってしまいましたが、説明欄に同等品の商品のリンクを貼っておきますので気になる方は購入して試してみてください。
ただしリンクは先ほど説明した通り中国代理店が販売する商品になりますのでその点はご注意ください。
ほかにも話したいことはたくさんあったのですが、重要なところを中心にまとめたつもりです。ほかの製品もこんな感じで徹底的に紹介・検証していきますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは今回はこの辺で終わりたいと思います。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。
出来る限りいろんなことを動画、記事にしたいと思っているのですが、基本自腹で検証をやっているため金銭的にも時間的にも限界があります。応援してくださる方がいらっしゃいましたらAmazon欲しいものリストからよろしくお願いします!


