パソコン検証編Part.3-4「CPUクーラー検証レビュー 風魔2 SCFM-2000」前編

今回はCPUクーラー検証編、本編の第4回目です。今回はSCYTHEの風魔2を検証していきます。


検証予定の製品や検証環境などの紹介は別の動画、記事でまとめていますのでぜひそちらをご覧になってからご視聴ください。
かなり長い動画、記事となっていますが、この動画を見ればこの製品のことがだいたい分かった気になれるほど内容は濃いものになっていますので、ぜひこの機会に風魔2について詳しくなっていってください。
製品の特長
それでは早速見ていきましょう。
まずは開封の様子を流しながら製品の特長をみていきます。


開封するとこんな感じにファンと本体と付属品が入っています。本体は段ボールで保護されていますが、段ボールから取り出すとかなり不安定なので、置くときは倒した状態で置くようにしましょう。
風魔2の公式サイトでの仕様はこんな感じです。


付属品をすべて出した様子がこちらです。グリスがシリンジでついているのはうれしいですね。
(実測値はヒートシンクの表面積を計算するための測定なので最大長ではなく代表値です。ご注意ください。)
本体はデュアルタワーなのでヒートシンクが2つに分かれていますが、前後どちらも48枚+天板1枚で構成されておりすべて0.4mm厚になっています。ヒートシンク形状は前側が幅130.2mm、奥行33.5mm のものが1種類、後ろ側は下8枚分が若干小さくなっているため2種類あり、幅130.2mm、奥行41.0mmのものが40枚と幅130.2mm、奥行19.8mmのものが8枚で構成されています。高さは156.5mmとヒートパイプ上端にばりがあったため公称値を超えていました。重量は750g(リテンションブリッジ部を除くと718g)でした。ヒートシンク部のみの高さは107.0mmでしたのでヒートシンク間の隙間は1.8mmです。ヒートシンクの表面積は実測値からの大雑把な概算ですが906426.36mm²となります。
CPUとの接触はベースプレートを介した構造でヒートパイプはφ6mm(太さ)が6本となっています。ベース部分のサイズは43.0mm×38.1mmでIntelもAMDもすべてのCPUがカバーできています。




ファンはSU1225FD12M-CHPとSU1215FD12M-CHPが1つずつ付属しており、どちらも最大1200rpmと回転数が低めのファンとなっています。ファン自体は25mmの一般的な厚みのものと15mmの薄型では一般的なものですが、防振ラバーに厚みがあるためそれぞれ2mmほど厚みが大きくなっています。ファンの固定はワイヤーでひっかけるタイプで3セット分付属しています。見た目はそっくりなのですが1つは薄型ファン専用です。


そして風魔2の最大の特徴がこのファンの構成で後ろ側は普通のファンですが、前側の薄いファンが逆回転のファンになっており2重反転構造になっています。2重反転構造は静圧を高めれるのが最大のメリットだと思いますが、本来2重反転ファンは狭いスペースに風を通す時や、空気でものを浮かすなど普通のファンでは得られない高静圧が必要な場面で使うものなのでこの製品で2重反転のメリットがしっかり活かせているのかは疑問です。この辺りは検証結果次第かなと思います。
CPUクーラーの固定はマウンティングキットにねじで固定するタイプで対応ソケットの幅は広く、旧世代のものから現行世代まで幅広く対応可能です。
LGA1700も別売のリテンションキットにより対応可能となっています。
固定方法と装着時のクリアランス
それではここからは実際にCPUクーラーの固定方法と装着時のクリアランスを見ていきましょう。
AM4


まずはAM4から。AM4ではマザーボード標準のバックプレートを用いてマウンティングキットを固定します。マザーボードを挟みこむようにスペーサーを装着し、マウンティングプレートをネジで固定します。実際にマザーボードに装着した様子がこちらです。マザーボードはGIGABYTEのX570 AORUS PROで撮影しています。


スペーサーに若干の保持力はありますが、バックプレートにスペーサーとマウンティングプレートを同時に固定するひつようがあるため、バックプレートが動かないよう平らなところに置いた方が作業しやすいです。マウンティングキットが取り付け出来たら本体をネジで固定するだけですね。取り付けは標準的な100ミリのドライバーがあれば作業可能ですが、グリップの大きなドライバーだと作業がしにくいです。風魔2には150mmのドライバーが付属していますのでそちらを使いましょう。


あとはワイヤーでファンを取り付けて完成ですが、ファンの固定がすごく硬いです。何回も付けはずししていると指がめちゃくちゃ痛くなるので注意しましょう。高さは標準の取り付け方だとファンよりもヒートシンク本体のほうが高くなります。風魔2はデュアルタワーで普通のCPUクーラーより大きくなっていますのでクリアランスも見ていきましょう。


まずはメモリー側。デュアルタワーのCPUクーラーはメモリーにかぶるものがほとんどなのですが、風魔2はオフセット構造+薄型のファンという特殊な構造によりメモリーとの干渉は一切ありません。これは大きなメリットですね。ただその分電源側にヒートパイプが大きく伸びており、かなり際どいところまでヒートパイプがきています。このマザーでは干渉しませんでしたが、ヒートシンクが大きいものでは干渉する可能性があります。

ファンを追加する場合もマザーボードのヒートシンクに注意が必要です。電源回路のヒートシンクやカバーに乗っかるかたちになりますのでヒートシンクの高さよりもわずかに高くなります。
AM5


つぎにAM5。マザーボードはMSIのMAG B650M MORTAR WIFIです。CPUを買っていないため本体の装着まではできませんが、今の状態だとマザーだけでいっぱいいっぱいなのでご了承ください。AM5はバックプレートが取り外せない構造になっているため一部取り付けができないCPUクーラーもありますが、風魔2ではAM4と同様の取り付け方で問題なく取り付けできそうです。AM5ではAM4とCPUの高さが違うようですが、クーラーには互換性があると正式に発表されていますので、AM4のものをそのまま装着したときに適切な装着圧になるように設計はされているんだと思います。
Intel(旧世代)


つぎにIntelの旧世代を見ていきましょう。(LGA775はもう対応製品が手元に残っていないため省きます)Intelマザーではクーラーに付属品のバックプレートを用いて固定します。購入時のバックプレートのソケット位置はLGA11XX・LGA1200の位置でしたので通常変更する必要はありませんが、ほかのソケットの場合はねじ位置をソケットの位置に合わせシリコンキャップで固定しなおす必要があります。ただこの固定は意外とずれやすく購入時点ですでにキャップが外れそうになっていることもありますので取り付け前にちゃんと確認しておきましょう。マザーボードを挟みこむようにスペーサーを装着し、マウンティングプレートをナットで固定します。


実際にマザーボードに装着した様子がこちらです。マザーボードはMSIのMPG B560I GAMING EDGE WIFIで撮影しています。Intelマザーの場合このスペーサーが非常に優秀でバックプレートをスペーサだけでしっかり保持することが可能になっています。多少力を加えても簡単に外れることはありませんのでものすごく取り付けがしやすいです。この恩恵が大きいのはケース内にマザーボードを固定した状態で取り付けるときですね。ケース内ではマザーボードが地面から浮いた状態になりますのでスペーサーを取り付けさえすれば後ろからバックプレートを支えていなくても大丈夫なのは本当に助かります。


マウンティングプレートを固定するナットはツールレスでも固定できますが、最近のマザーはヒートシンクが大型化しているため手回しが難しい製品が多くなったのと、何年間も使っているとファンの振動が伝わって緩んでしまうことがたまにありますので個人的にはドライバーでしっかり固定することをおすすめします。ヒートシンク本体の固定に結局ドライバーが必要になりますのでツールレスのメリットは少ないんじゃないないかなと思います。

あとは先ほどのAM4の時と同様に本体をねじ止めしファンを取り付けるだけです。ねじの硬さやファン固定時の硬さも同様です。
Mini-ITXのマザーボードなのでクリアランスも見ていきましょう。


まずメモリー部分ですが、メモリースロットにぴったりぐらいの位置ですね。いろんなメモリーを装着してみましたが、高さのあるメモリーでもぎりぎり干渉を避けれていました。
つぎに背面側。ご覧の通りヒートシンクとヒートパイプが接しています。グリスの接触は問題なかったのでギリギリセーフでしたが、マザーボードのヒートシンク形状によっては干渉します。最近のマザーボードはヒートシンクが大型化していますし、なかなか製品画像だけで判断するのは難しいのでヒートシンクが出っ張っているものでは避けたほうが無難だと思います。

そして上下方向ですが、ヒートシンクが130mmとファンよりやや大きいため拡張スロットとの隙間もケース上部との隙間も若干狭くなっています。ただ普通の構成で組んでいればそこまで干渉を気にするようなレベルではないと思います。
電源回りのヒートシンクとの干渉のほうが大問題ですね。
Intel(LGA1700)


そして最後にLGA1700を見ていきましょう。
この製品自体はLGA1700をサポートしていませんので、こういった別売のマウンティングキットが必要になります。この製品の場合この2種類ですね。現在は白いほうのみ販売されていますが、バックプレートに若干違いがあるだけです。取り付け方法は旧規格のソケットと同様なので省略します。実際にマザーボードに装着した様子がこちらです。
マザーボードはASUSのPRIME Z690-Aで撮影しています。装着後の感じもこれまでの説明と同様なので省略します。


そしてもう一つ。このマザーボードには旧規格のクーラーを装着できる穴が開いているため古いマウンティングキットのまま装着もしてみました。その状態がこちらです。一見特に問題ないように見えますが、実はバックプレートが浮いています。


さすがに怖かったのでしっかり固定まではしていませんが、あきらかにバックプレートとマザーボードが干渉しています。しっかり気にしていないと気付かないレベルかもしれませんが、ASRockがユーザーに不利益になるから採用を見送ったと言っていた理由はこれかーwって思いました。しっかり固定すれば装着できなくはないのですが、クーラーの装着位置はマウンティングキットで高さが決まります。

LGA1700は旧ソケットと高さも異なるため、サイズの場合はマウンティングプレートの高さが違っています。適切な装着ができずマザーボードにも無理な力をかけてしまうことになりますので正直なところ無理に装着はしないほうが無難かと思います。LGA1700に装着する場合はマウンティングキットをかならず購入しましょう。
これに関してはCPUクーラーではなくASUSの設計が悪いですね・・
バックプレートとマザーボード背面のチップの干渉


ここまで特に大きな問題がないように見えますが、実は1つ大きな問題を抱えています。それはバックプレートとマザーボード背面のチップの干渉です。この写真を見てください。なんとバックプレートのマザーボードと接する部分に圧痕がついているんです。マザーボードに装着している状態の写真がこちら。完全にチップに覆いかぶさっていますね。


風魔2の場合この部分はシリコン素材のため人によって論外ととらえるかまぁ大丈夫でしょうととらえるか分かれるところだと思いますが、この問題はうちにあるマザーボードだとMPG B560I GAMING EDGE WIFIとROG STRIX B660-I GAMING WIFIの2製品で確認できました。どちらも最近のminiITXマザーなので、もしかしたら最近の回路密度の高い製品で干渉しやすくなっているのかもしれません。ほかのこれらの製品では問題ありませんでした。AMDではマザーボード標準のバックプレートを使用するため問題ありませんし、Intelでも干渉しない製品のほうが圧倒的に多いと思いますが、気を付けておいて損はないかと思います。詳しくはこの問題についてだけまとめた動画・記事がありますのでそちらをご覧ください。

スペーサーの取り外しについて

かなり長くなっていますが取り扱いに関してもう一つだけ。取り外しについてです。装着の時にスペーサーがかなり便利と言いましたが、そのスペーサーのせいで取り外しはしにくいです。とくにヒートシンクが大型のマザーボードではスペーサーを指でつかむことができなくなるためねじを押し出す感じで外さないとうまく外れません。またスペーサーに両面テープが使われているため長期間使っていると熱や経年劣化で周囲がべたつくのも気になりました。頻繁に付け替えるものではないので取り付けがしやすければ問題ないかもしれませんが、最近のマザーボードはCPU周辺のスペースがどんどん狭くなっていますので個人的にはもう少し外しやすいほうがうれしいです。
以上が装着についてです。
後編で
①CPUの標準の電力設定で簡単なテスト
②TDPごとのテスト
③FANの回転数を変化させてのテスト
④FANを統一してのテスト
⑤FANレスのテスト
を見ていきます。
