パソコン検証編Part.3-5「CPUクーラー検証レビュー 風魔2 Rev.B」後編

今回はSCYTHEの風魔2 Rev.B後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。



標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
最初にお詫びです。


先ほどマザーボードのヒートシンクとの干渉についてお話ししましたが、検証環境のマザーボード(ASUS ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI)と見事に干渉してしまいました・・
動画では5番目の紹介ですが、検証段階ではもうすでに20個ほど検証した後だったため、マザーボードだけMSIのMEG Z490 UNIFYに入れ替えて検証しています。電力制限などマザーボードの設定はできるだけ同じように設定しましたが、マザーボードのCPU温度管理が根本的に異なっていたためCPU温度が90℃を超えないような設定を追加しています。そのためほかのCPUクーラーとは単純な数値の比較はできません。検証環境が変わってしまい申し訳ありませんが、ご理解いただきますようお願いいたします。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。トリプルファン構成も検証したのでそれぞれ紹介していきます。
デュアルファン アイドル


まずは標準構成から。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は15.7W、FAN回転数は406RPM、CPU温度は38℃となりました。
デュアルファン Cinebench R23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は184.0W、FAN回転数は1270RPM、CPU温度は74.1℃となりました。Tauが56sで設定しても56sにならない症状はこのマザーボードでも同じでしたので、消費電力がきれいな2段階のグラフになっています。このことからサーマルスロットリングは起こっていないことがわかりますね。今回のテストでは44sほどでPL1に切り替わっていますので本来の56sでも問題なく耐えれそうです。一応スコアはこんな感じでした。
デュアルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は116W、FAN回転数は1097RPM、CPU温度は66.3℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で69.9℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが41.2dBとなりました。
トリプルファン アイドル


つぎにトリプルファン。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は20.1W、FAN回転数は420RPM、CPU温度は39℃となりました。
トリプルファン CinebenchR23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は172W、FAN回転数は1134RPM、CPU温度は70.3℃となりました。サーマルスロットリングが起こっていないのは同じなのですが、37sでPL1に切り替わってしまったため平均値が下がっています。ただこの結果から判断すると長時間の負荷でも80度ちょっとで安定しそうですね。一応スコアはこんな感じでした。
トリプルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は114.5W、FAN回転数は992RPM、CPU温度は63.4℃となりました。標準構成の時よりCPU温度は低くなっていますね。GPU温度は平均値で67.4℃とほぼ同じですが、騒音値は12回の平均値で40.8dBと若干静かになっていました。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。標準構成・トリプルそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
デュアルファン


まずは標準構成から約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、89℃、85℃、83℃、79℃、72℃、66℃、60℃、52℃、45℃となりました。200W以上のテストでは電力制限と実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。

また150W以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。

250Wと275Wのテストがほぼ同じ結果になっていますが250Wだけではサーマルスロットリングなのか消費電力のブレによるものなのか判断が難しかったため275Wでもテストしました。そしてこの結果から風魔2Rev.Bの冷却性能は228Wということもわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、風魔2Rev.BのCSs=228Wです。
トリプルファン

つぎにトリプルファン。中央値は高い順に89℃、87℃、83℃、82℃、75℃、70℃、63℃、56℃、50℃、44℃となりました。先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。トリプルファン構成の冷却性能は234Wのようですね。ファンを追加したものをCS+と勝手に呼びますが、風魔2Rev.BのCS+=234Wです。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。

そのグラフがこちらです。オレンジの点が標準構成の青い点がトリプルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。トリプルファンは全体的に性能向上がみられますが、CSs=228W、CS+=234Wと6Wの差なのでファン増設の効果は限定的かなと思います。
FANの回転数を変化させてのテスト
つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
デュアルファン


まずは標準構成から。先ほどのテストでCSs=228Wということが分かったので、CSsを超える負荷が安定してかけられるTDP275Wで測定しています。
結果を見る前に検証時のトラブルについてお話ししないといけないのですが、このグラフですでに変な部分が気になっている人もいると思います。この回転数ごとのテストはこのマザーで行った一番最後のテストなのですが、途中でMSI Centerのアップデートがかかってしまい、それ以降CPUの消費電力がたまに下がるという謎の現象に見舞われました。下がるかどうかはおそらく運次第で下がらない時もあるのですが、下がる頻度のほうが多く、きれいなグラフになるまで取り直しをしているとかかる時間が未知数だったのと、結果には大きく影響しないと判断しましたのでこの結果で妥協させてください。MSI Centerの自動アップデートを切り忘れてたわたしが悪いのですが、元のバージョンをメモっていない上旧バージョンの入手方法が分からなかったためこのような事態になりました。原因が別にあるのかもしれませんが、検証中ほかに変更した点はありませんのでおそらくMSI Centerのアップデートに起因する不具合だと思います。

それでは結果を見ていきましょう。どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に228W、221W、218W、211W、202W、191W、176W、154W、124W、80Wとなりました。回転数10%は20%と回転数が変わらなかったため省略しています。回転数0%の結果をCS₀と呼ぼうと思いますので風魔2Rev.BのCS₀=80W。また赤い点線でnoctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能を入れてありますが、CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので、風魔2Rev.BのCSM=233Wとなりました。CSMとCSsの差は5Wと小さいですので、付属のファンでもヒートシンクの性能を十分引き出せていると思います。
トリプルファン

つぎにトリプルファン構成。CS+=234WだったのでCS+を超える負荷が安定してかけられるTDP275Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に233W、231W、228W、225W、220W、210W、199W、177W、134W、80Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=233Wです。トリプルファンでは上のほうが重なってきていますね。CSMとの差はなくなりました。

回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るに回転数に応じて性能は上がっていますが、回転数が高くなるにつれてほぼ平らなグラフになっています。また傾向線どうしの差が一番大きいのは40%あたりですので回転数が高いときより低い時のほうがファン増設の恩恵が大きいこともわかりますね。

そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線は緩やかな曲線を描いていますね。標準構成とトリプルファンで回転数が若干違うため傾向線がややずれていますが差は1%以下なので誤差の範囲内かなと思います。
ファンを増設したのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。

騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、トリプルファンでは想定していた騒音値を突き抜けてしまいましたw
他の製品とグラフのメモリを合わせるためこのままでいきますが、100%回転時は44.6dBだったのでうるさいってレベルじゃないですねw

ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が最大41dBを超えていてほかのCPUクーラーと比べてもちょっとうるさい印象だったのですが、ベンチ中のCPUクーラーの騒音値は回転数を考えると最大で37.5dBほどだったことがこのグラフからわかります。通常ゲーム中の騒音値はグラボの騒音値によるところが大きいのですが、風魔2Rev.BではさすがにCPUクーラーの動作音も無視できないレベルとなり、ベンチ中の動作音がかなり大きくなったのではないかと思います。

話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。

さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、標準構成では回転数を70%以下に抑えるといいんじゃないかなと思います。
わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、風魔2Rev.BのCSLN=202Wです。
標準構成でもトリプルファンでも100%回転時は40dBを超えてくるのでうるさいです。やはり38dBを超えると気になってきますので、標準構成でも80%以下に、トリプルファンでは70%以下に抑えたほうがいいと思います。トリプルファンでも60%以下に抑えればかなり静かになります。ファンを増設すると性能をあげることができますが、やはり最大のメリットは性能アップではなく性能を維持しながらファンの回転数を落とせること、つまり静穏化です。性能を維持しつつかなりの静穏化ができますので自分の好みにチューニングしてみてください。

そして虎徹の動画・記事を見てくださった方はもうお気付きだと思いますが、騒音値で性能をしぼると案の定前モデルと大差がなくなります。つまり前モデルの風魔2の時点で完成された製品だったということですね。
高回転のFANを採用している強力なライバル製品がいくつも登場していますので、同じようにFANの回転数を上げることで少しでも冷却性能を上げて対抗しようとしたのかもしれませんが、結局うるさくなっただけで評判が落ちる原因にしかならないんじゃないかなと思います。虎徹以上に前モデルより扱いにくくなりましたので早急に改善を希望します。
FANレスのテスト

そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。
FAN回転数0%での負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。10分間のテストではサーマルスロットリングはおこらず最高温度は75℃とまだ余裕がありますが、グラフを見るにこのまま負荷をかけ続ければおそらく100℃に達してしまうんじゃないかなとおもいます。CS₀=80Wだったのでもしかするとギリギリ耐えれるかもしれませんが、ファンレス用に設計されているわけではありませんし、このあたりはほかの製品と比較しながらのほうが分かりやすいので詳しくは別の動画で考察します。


以上で結果の紹介は終わりです。
最後に性能をまとめたグラフを1画面にまとめておきましたので、よりじっくり見たい人はこの画面をスクショしておいてください。
またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
そして重要なのはこの結果はあくまで検証環境での結果です。温度は使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット

デメリット

おすすめ度

※AMaGiのおすすめ度は☆2(干渉なしなら☆3)
冷却性能は高いですが、かなりうるさく回転制御必須。回転制御すれば静かで冷えますが購入の決め手には欠けます。
デュアルタワーなのにメモリーとの干渉を心配しなくていいのが大きなメリットな反面、そのせいでマザーボードと干渉するリスクがあります。今回干渉したマザーはASUSのROGシリーズなのでヒートシンクが特に大きいシリーズですが、デュアルタワーでも干渉しない製品がちゃんと存在しますのでこれに関しては大きなマイナス点です。ヒートシンクの小さなものを選べば大丈夫ですが、干渉するかどうかを製品画像だけで判断するのはなかなか難しいですのでそれなりにリスクを伴います。干渉のリスクを考慮するとこのような評価かなと思います。リスク回避が必要なうえチューニングが必須なのでかなり玄人向けの製品ですね。
もし確実に干渉しないのが分かっているマザーとの組み合わせであってもやっぱりうるさいので☆3かなと思います。
あまり批判的なことばかり言いたくはなかったのですが、個人的には干渉を抜きにしても前モデルを再販してほしいレベルです。冷却性能ばかりが重視されて製品バランスが崩壊しています。
一応説明欄に商品リンクを貼っておきますが、こういった欠点を理解したうえで購入してください。
ほかにも話したいことはたくさんあったのですが、重要なところを中心にまとめたつもりです。ほかの製品もこんな感じで徹底的に紹介・検証していきますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは今回の動画はこの辺で終わりたいと思います。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。
1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。

