パソコン検証編Part.3-9「CPUクーラー検証レビュー KOTETSU MARK3」後編

今回はサイズ製のKOTETSU MARK3後編です。
前編では装着や干渉についてみてきましたので後編でテスト結果をみていきます。



標準の電力制限でのテスト
ここからは温度を見ていきましょう。
まずは標準の電力制限でのテストから。このテストはあまり言うこともないのでパパっと見てきます。デュアルファン構成も検証したのでそれぞれ紹介していきます。
シングルファン アイドル


まずはシングルファンから。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は23.1W、FAN回転数は703RPM、CPU温度は38℃となりました。
今回検証機の構成と設定はアイドル時の消費電力が高くなる設定のためやや高めの温度になっています。(メモリーの設定をXMPからJEDECに変更するのとPCIeのASPMを有効にすると標準レベルの消費電力になります。)
シングルファン Cinebench R23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は168.4W、FAN回転数は1133RPM、CPU温度は74℃となりました。

本来消費電力がきれいな2段階のグラフになるはずなのですが、今回のテストではPL2まで消費電力があがりきらず均一な負荷となりました。これに関してはここで話すとすごく長くなってしまうため番外編かなにかで説明しようと思いますが、何度設定しなおしても意図した挙動にならなかったためこの結果を紹介しておきます。一応スコアはこんな感じでした。
シングルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は77.1W、FAN回転数は901RPM、CPU温度は63.1℃となりました。ゲームではこのグラフのようにデータ読み込み時など一時的に消費電力が上がることはあるものの高負荷な状態が続くことはめずらしいです。ベンチ台でのテストのためグラボの排熱の影響が少ないということもありますが、十分問題なく冷却できていると思います。グラフにはGPU温度も載せてありますが、平均値で68.6℃。そして負荷が高くなる戦闘シーン以降の騒音値も測りました。こちらはランダムのタイミングで12回測定した平均値になりますが40.7dBとなりました。スコアはこんな感じです。
デュアルファン アイドル


つぎにデュアルファン。ファンの回転数はマザーボードの自動制御で、このような設定になっています。
10分間のアイドルテストではこのような結果になりました。中央値で消費電力は25.8W、FAN回転数は723RPM、CPU温度は39℃となりました。
デュアルファン CinebenchR23


つぎにCinebnchR23を1周回したときの結果です。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は168.5W、FAN回転数は1073RPM、CPU温度は73℃となりました。デュアルファンでも先ほどと同じように均一なグラフになりました。一応スコアはこんな感じでした。
デュアルファン FF15


つぎはFF15ベンチです。負荷がかかっているときの平均値で消費電力は75.9W、FAN回転数は868RPM、CPU温度は60.4℃となりました。GPU温度は平均値で68.7℃、騒音値は12回の平均値で40.6dBになりました。スコアはこんな感じです。
TDPごとのテスト
そしていよいよTDPごとのテストです。ファンの回転数は先ほどと同様マザーボードの自動制御です。シングル・デュアルそれぞれ各TDPの結果を一つのグラフにまとめてみました。
シングルファン


まずはシングルファンから。約10分間のテストで中央値は消費電力の高い順に89℃、88℃、84℃、77℃、72℃、64℃、54℃、43℃となりました。TDP175W以上のテストではTDPと実際の消費電力に差が生じたため、消費電力の中央値をカッコで記載しています。


また175W以上のテストでは温度のブレが大きくなっていますが消費電力はこのようにどのテストでもほぼ一定です。一番消費電力の高い225Wのテストのみサーマルスロットリングが働いたためこのような推移になっています。実際の消費電力が低いのはこのためです。そしてこの結果からKOTETSU MARK3の冷却性能は194Wということもわかります。ただしこの結果はあくまで今回の検証環境での結果なのでわたしの動画ではCS(CoolingScore)という造語とstandardの頭文字をとってCSsと勝手に呼びますが、KOTETSU MARK3のCSs=194Wです。ちなみにKOTETSU MarkⅡ RevBのCSsも194Wだったので性能は伸びてませんね。
デュアルファン

つぎにデュアルファン。中央値は高い順に89℃、85℃、81℃、74℃、69℃、60℃、51℃、41℃となりました。先ほどと同様TDPと実際の消費電力に差があるものは実際の消費電力の中央値をカッコで記載しています。
デュアルファン構成の冷却性能は206Wのようですね。
ファンを追加したものをCS+と勝手に呼びますが、KOTETSU MARK3のCS+=206Wです。
KOTETSU MarkⅡ RevBのCS+=197WだったのでCS+に関しては大幅な性能アップを遂げています。ヒートシンクの性能は旧モデルよりも上がってそうですね。
このグラフでも温度の違いは見てとれますが、ちょっとごちゃごちゃしているのでもっとシンプルにすべての中央値だけをプロットしてみました。

そのグラフがこちらです。オレンジの点がシングルファン、青の点がデュアルファンの結果です。点線は傾向線で、このグラフではきれいな直線になりました。デュアルファンは全体的に性能向上がみられますが、CSs=194W、CS+=206Wと12Wの差なのでデュアルファンの効果はそれなりに大きいです。
FANの回転数を変化させてのテスト
つぎにFANの回転数ごとのテストです。回転数はマザーボードのユーティリティで10%ずつ変化させて測定しています。
シングルファン


まずはシングルファンから。先ほどのテストでCSs=194Wということが分かったので、CSsを超える負荷をかけられるTDP225Wで測定しています。どのテストもサーマルスロットリングが働いて消費電力が下がっているため中央値は約10分間のテストの内最後の1分間のみで求めています。中央値は回転数の高い順に194W、192W、189W、187W、180W、172W、162W、144W、119W、82W、68W、44Wとなりました。本来回転数0%はファンレスでのテストだったのですが、今回のテストではマザーボードのファンコンで0%まで徐々に回転数が下がってしまうため、表記は0%ですが、ファンは動いているというややこしい状態が出来上がっています。ファンレスはファンレスとして別に表記していますのでご注意ください。ファンが回転していない状態の結果をCS₀と呼ぼうと思いますのでKOTETSU MARK3のCS₀=44W。
また赤い点線でnoctuaのFANデュアル構成に交換した時の性能を入れてありますが、CSM (CSMax)と呼ぼうと思いますので、KOTETSU MARK3のCSM=209Wとなりました。旧モデルより11Wも高くなっていますのでやはりヒートシンクの性能はよくなっています。ただCSMとCSsの差は15Wもありますのでシングルファンではせっかくのヒートシンクの性能が十分引き出せていないですね。ファンが足を引っ張っている印象をうけました。
デュアルファン

つぎにデュアルファン構成。CS+=206WだったのでこちらもTDP225Wで測定しています。中央値は回転数の高い順に206W、204W、201W、197W、194W、185W、175W、165W、126W、101W、90W、44Wとなりました。赤い点線は先ほどと同じでCSM=209Wです。デュアルファンではCSMとの差は小さくなっていますのでデュアルファンにすれば付属ファンでも十分といった印象です。

回転数ごとの結果もそれぞれの中央値だけプロットしてみました。傾向線が緩やかなカーブを描いていますね。この傾向線を見るに回転数に応じて性能は上がっていますが、回転数が高くなるにつれてほぼ平らなグラフになっています。傾向線どうしの差が回転数によらずほぼ一定なのが特徴的ですね。

そしてファンの性能もグラフにしてみました。まずは回転数ごとの風量と騒音値のグラフです。風量の傾向線は緩やかなカーブを描いていますね。デュアルファン構成はシングルファンの時より回転数が少し低いため傾向線が若干ずれていますが差は3%くらいなので個体差の範囲内かなと思います。
デュアルファンなのに風量は増えないの?って思う方もいると思いますが、CPUクーラーの場合ファンが直列に配置しているためファンが何個になっても風量は増えません。直列にファンを増やした場合に増えるのは風量ではなく静圧です。静圧に関しては測定の仕方が分からなかったため申し訳ありませんが省かせていただきます。騒音値は環境音以下が測定できないので傾向線はありませんが、回転数に対し指数関数的に増加しているのがわかりますね。

ここでちょっとFF15ベンチのテスト結果の話に戻ります。FF15ベンチでは騒音値が40dBを超えていたのですが、ベンチ中のCPUクーラーの回転数を考えると騒音値は最大でも35dB以下だったことがこのグラフからわかります。つまりゲーム中の騒音値はCPUクーラーの騒音値ではなく、ほぼグラボの騒音値によるものだったということになります。

話を元に戻しますが、このグラフの結果を風量と騒音値を軸にプロットしたグラフがこちらです。このグラフのほうが風量の増加に対し騒音値の増加が顕著に高くなるのが分かりますね。

さらに騒音値を回転数別の冷却性能と照らし合わせたグラフがこちら。これを見てもやはりファンの回転数による性能上昇より騒音値の上昇が目立ちますね。わたし個人の感覚ですがこの環境音に対し+2dB程度(36dB未満)であれば気にならないレベル、+4dB(38dB)を超えてくるとなんかパソコン頑張ってるなぁって感じるレベルですので、シングルファンでも回転数100%だと少し動作音が気になりました。回転数を90%以下に抑えれば十分静かになりますし、80%まで抑えるとめちゃくちゃ静かになります。
わたしの動画では36dBを切るもっともいい結果をCSLN(LowNoise)と呼ぶことにしますので、KOTETSU MARK3のCSLN=189Wです。KOTETSU MarkⅡ RevBのCSLN=187Wでしたので誤差レベルですが若干上昇していますね。ただ、KOTETSU MARK3は回転数を80%以上にすると風切り音が強くなるため高回転時の動作音はKOTETSU MARK3のほうが大きいのは注意が必要です。
デュアルファンの方は最大42dB近いので100%だとかなりうるさい印象ですが、こちらも回転数を80%に抑えれば十分静かになります。シングルファン同様80%以上は風切り音がかなり大きくなりますので、デュアルファン構成のメリットは性能アップではなく性能を維持しながらファンの回転数を落とせること、つまり静穏化のためのファン増設と考えましょう。性能を維持しつつ最大で-2dBほど静穏化ができますのでぜひチューニングしてみてください。
FANレスのテスト

そして最後のテスト。TDP65Wでファンレスのテストをやってみました。FAN回転数0%での負荷テストはすでに1つやっていますが、低発熱環境でのどのように推移するのか気になったのでグラフにしました。10分間のテストではサーマルスロットリングが発生し最終的に消費電力が50Wまで落ちています。CS₀も44Wでしたのでヒートシンク自体の性能はそこまで高くないようです。ただファンレス用に設計されているわけではありませんし、このあたりはほかの製品と比較しながらのほうが分かりやすいので詳しくは別の動画で考察します。
以上で結果の紹介は終わりです。


最後に性能をまとめた グラフを1画面にまとめておきましたので、よりじっくり見たい人はこの画面をスクショしておいてください。またCPUの消費電力って普通どれくらいなの?って人向けに各CPUの仕様上のTDPとわたしが実際に測定したことのあるCPUのCinebench実行時の消費電力を一覧にしておきましたので参考にしてください。
そして重要なのはこの結果はあくまで検証環境での結果です。温度は使用パーツや設定、ケースのエアフローなどあらゆることに影響されますので必ずしもこの結果通りになるとは限りません。とくにCPU内部の設計や発熱密度は温度を左右する大きな要因になりますので、ぜひいろんな経験をして最適解を見つけていってください。
まとめ
メリット

デメリット

おすすめ度

※AMaGiのおすすめ度は☆1(干渉なしなら☆4)
まず最初に断っておきますが、バックプレートの干渉が致命的なため、注意喚起もこめてこの評価としました。干渉で取り付けられないならまだましだったのですが、最悪マザーボードを壊してしまいますのであまりにも致命的です。くれぐれも注意してください。
ただ干渉する製品は一部の製品に限られるため干渉を除けば☆4かなと思います。
個人的にはKOTETSU MARK3はKOTETSU MarkⅡ RevBの性能アップ版ではなくKOTETSU MarkⅡの不満点を改善したモデルチェンジという印象でした。特に取り扱いに関しては旧モデルから大きく改善されており、着脱時の不満はほとんど改善されています。標準構成では性能こそ上がっていませんが、少なくともKOTETSU MarkⅡ RevBよりは良い製品に仕上がっているのかなと思います。発売直後は4000円ほどしていますが、現在は3500円くらいになっていますので、コスパのいいおすすめの1台ですね。
ただ前モデルと比べるとヒートシンクの性能は向上したものの、シングルファンではファンの性能が足を引っ張り実性能は伸びていませんし、高回転時の風切り音が旧モデルよりも大きくなったりとヒートシンクとファンのちぐはぐ感は否めません。
なのでメーカー都合のモデルチェンジという意味合いのほうが強いのかな?というふうに感じています。旧モデルではマウンティングプレートが最大3種類も付属していたり、ヒートパイプにほぼ接していないフィンがあったりとかなり無駄が多く、おそらくそのせいでMark2RevBは値上げせざる負えなかったように思いますので、そのあたりを一度整理し直しつつ最近のはやりに合わせたデザイン変更をしてきたのかなと思います。それにやっぱりRGBモデルが存在するのかが気になりますね。ファンが光るものはいくつもありますが、ヒートシンク本体が光るものは現在販売されているものではAS500だけなので、もしKOTETSU MARK3のRGBモデルが出てきたら12cmファンモデルの中で本体が光る唯一のモデルになります。勘ぐりすぎかもしれませんが、それを狙ってきているような気がするんですよね~
ライバルのAK400との比較も気になると思いますがどちらも一長一短でどちらかが完全に上というわけではありませんので好みや値段で決めるのがいいのかなと思います。
なんにせよバックプレートの干渉に関しては間違いなく改悪としかいいようがないので早急に改善されることを願ってます。
説明欄に商品のリンクを貼っておきますので気になる方は購入して試してみてください。
ほかにも話したいことはたくさんあったのですが、重要なところを中心にまとめたつもりです。ほかの製品もこんな感じで徹底的に紹介・検証していきますのでこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは今回の動画・記事はこの辺で終わりたいと思います。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。
1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。

