パソコン検証編Part.3-d「CPUクーラー検証レビュー 装着圧が足りないCPUクーラー

今回はCPUクーラー検証の番外編。
検証中に困らされた問題児のCPUクーラーについてです。
少し前にCPUクーラーの干渉についての動画、記事を公開していますが、今回のもなかなかな問題なのにほとんど認知されていないように感じています。
チャンネルのコミュニティやX(旧Twitter)ではすでにお伝えしましたが、ありがたいことに動画を期待される声をいただきましたのでいそぎ動画化しました。
すこしでも多くの人に知ってもらいたいので拡散してもらえると嬉しいです。
問題の製品
どのような問題なのかを見ていく前にまずこの問題が起こった製品を紹介します。

それがこちら。DEEPCOOLが2022年に発売した簡易水冷、LSシリーズです。ラジエーターサイズには関係なくすべてのどのサイズでも起こります。
では実際どのような問題なのかというと、Intelの旧ソケット(LGA11xxとLGA1200)に装着するとまったく装着圧がかからず性能が出ません。


装着ミスや干渉、不具合などいろいろなトラブルを考慮してかなりの回数試行錯誤しましたが、わたしの導き出した結論は設計不良です。
おそらくDEEPCOOLの第4世代の水冷に特有の問題なのかなと感じていますが、わたしは第4世代はLSシリーズしか持っていないのでLTシリーズについては確認ができません。ただ製品ページを見た感じではLTシリーズも同様の問題を抱えているように見えますので購入する際はご注意ください。
この動画、記事で伝えたかったことはここまででほぼ終わりですw
ここからはもっと具体的にどのようにしてそうなってしまうのかを経緯を追って説明していきますので興味がある方は見てください。
問題の経緯
それではここから長い雑談ですw
まず判明した経緯は視聴者さんから水冷の検証も見たいというご意見をいただいたのでまだ検証していなかったLSシリーズの検証を始めてたんです。でもこれがまったく冷えなかったんですよ・・・

このグラフを見てもらいたいのですが、これは実際にLS520で検証した結果の一部です。
消費電力が低いうちはぜんぜん問題なかったんですが、消費電力が高くなると温度がどんどん上がっていって最終的にCSs=190WだったのでまさかのAK400以下の結果になりました。
さすがに冷えなさすぎなので装着ミスかなと思って一度外してみたんです。

するとグリスがこんな感じでした。誰が見ても一目瞭然で、ぜんぜん装着圧がかかってないんです。
ミスっちゃったか~と思って取り付け方法をもう一度見直して、装着し直して再検証!
でもやっぱり同じ結果・・・


もしかして装着圧が弱くてグリスが伸びていないのかなと思ってグリスをたっぷり塗って再装着。(3倍量)
さっきよりは少し良くなったけどそれでもCSs=200W。どう考えても240mmの水冷の性能じゃないですよね。
そこからが大変でした。なんどもなんども説明書を読み直して、何回も装着し直して。
浮いてるってことは干渉してる可能性が高いけどマウンティングプレートだけ装着しても干渉してるようには見えないし。

なにやっても改善できなかったんです。ポンプの回転数も規定値の3100rpmくらい出ていたし、ファンも特に問題なかったけど、もしかしたら冷却液不足やエアーを噛んでいて冷却液がうまく回ってないのかもと思ってLGA1700に装着したりもしてみました。
すると性能しっかり出るんです。期待してたほどは冷えなかったのですが、あきらかな異常という感じはありませんでした。
そうなるといよいよ本体の問題ではなく取り付けの問題ですよね。でも何度やってもしっかり装着できません。
そしてようやく設計ミスかもという疑問にたどり着きました。そんなことはないだろうと踏んでいたので考えもしなかったのですが、あまりにも改善できないので、ふと、そもそもこれ当たるようにできてる?って思ったんです。
そこまでくればあとは計測です。その結果がこちら。


まず取り付け時の写真がこちら。それをイラスト化したのがこちら。
それぞれ計測した数値を当てはめるとこうなります。

まずマザーボード表面からCPUの表面までの高さは7.07mmでした。そしてスペーサーの高さは10.25mm、マウンティングプレートの厚みが1.55mm、ヘッドのCPU接触面までの段差は4.55mmでしたので、計算するとヘッドの位置はマザーボードから7.25mmの高さにあることになります。CPUの高さを超えていますね。
これでは装着圧がかかるわけがありません。
ということで、冷えない原因は装着圧がまったくかからないから、グリスの厚みが分厚くなりすぎて熱抵抗が大きくなり、CPUクーラーに十分熱が伝わらないという結論に至りました。

一応他のCPUクーラーでも確認しましたが、どれも7mm以下なので装着圧はちゃんとかかります。この数値は必ずしも装着圧の強さではありませんので数値の大きい小さいはあまり意味がありません。重要なのはどれもCPUの高さを下回っていることです。

今回の問題はIntelの旧ソケットのみで起こる問題でLGA1700やAM4、AM5では問題ありません。旧ソケット対応と謳っているからには問題なく装着できないと話にならないのでメーカーにも代理店経由で報告していますが、どうなることか・・・
少なくとも私の持っているLS320、LS520、LS720すべて性能がでていませんのでこれらの製品とIntel旧ソケットを組み合わせている方はご注意ください。上位モデルのCPUと組み合わせている方は190W以下の電力制限をおすすめします。バックプレートの干渉のように壊れる危険性が高いわけではありませんが、現状ではDEEPCOOLの第4世代水冷はAMD用もしくはIntelのLGA1700専用と考えていいと思います。
この件についてメーカーから回答をいただけましたので、その内容をまとめておきます。
メーカーからの回答は「設計に問題はないが、装着圧が足りない場合はLGA1700用のスペーサーを使用しても大丈夫」とのことでした。
ただ個人的にはその回答の中にあった設計上の数値に間違いがあると感じています。
「スペーサーの高さ(ピラーというようです):10mm、バックルの厚み:1.5mm、ヘッドの底段の高さ:4.55mm」
で設計しているとのことで、この部分には私の測定とも大きなズレはありませんでした。
問題はCPUの高さの方です。
「CPUの高さは7.8mmなので計算上0.85mmの変形があり、圧力がかかるから問題はない」
とのことでしたが、手元にある以下のLGA1200のマザーボードで計測した結果は下記の通りでした。
・ASUS ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI
・MSI MPG B560I GAMING EDGE WIFI
・MSI MEG Z490 UNIFY
・MSI MPG Z490 GAMING PLUS
・ASRock H470 SteelLegend
CPUをソケットに置いただけの状態:7.71~7.83mm
ブラケットで固定した状態:7.02~7.25mm
なのでメーカーの言うCPUの高さはCPUをソケットに置いただけの状態で、ブラケットで固定した状態ではないんですよね…(;´・ω・)
設計上のヘッドの位置は6.95mmなのでそれでもギリギリ当たっている設計にはなっていますが、スペーサーは樹脂なので今回のように若干大きいと当たらなくて当然という結果になります。
少なくともCPUの高さは7.8mmではないのでそれで圧力がかかるから問題ないと言われても…という感じ。
今回はLGA1700のスペーサーを使用しても大丈夫という回答もいただいているので、その方法で代用しようと思いますが、釈然としないんですよね…
もしCPUの高さについて詳しい方がいたらコメントで教えていただけると嬉しいですm(__)m
このことはメーカーにも報告済みです。
この検証編はわたし個人の考察です。見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。いろんな動画やサイトを見て自分にとっての正解を見つけてください。1人2人の意見だけで決めつけるのではなく、たくさんの意見を取り入れていってください。
出来る限りいろんなことを動画、記事にしたいと思っているのですが、基本自腹で検証をやっているため金銭的にも時間的にも限界があります。応援してくださる方がいらっしゃいましたらAmazon欲しいものリストからよろしくお願いします!