パソコン検証編Part.2-1「グリス検証レビュー第1回」
こんにちはAMaGiです。
今回は検証編!グリスの比較をしてみました。
CPUクーラーを装着する際になくてはならないグリスですが、グリスもいろんなメーカーからたくさんのグリスが発売されています。高性能だとか、塗りやすいだとか、高耐久だとか、オーバークロッカー推奨だとか製品ごとにアピールポイントは異なりますが、実際どのくらい違うの?CPUクーラーに付属のものじゃダメなのって気になっている人も多いんじゃないでしょうか。適切な塗る量やおすすめの塗り方もみんな言ってることがバラバラで、結局どうしたらいいの?って聞かれることもしばしばです。
そこで実際にいろんな塗り方や製品を比較をしてみました。わたしなりの目線で様々な角度から見ていこうと思いますので、数あるレビューの中の1つとして参考にしていただければと思います。
グリスの塗り方の種類
第1回目の今回はグリスの塗り方による比較をみていきます。
今回比較した塗り方はこちら!!
1点盛、1本盛、2本盛、3本盛、5点盛、X盛、ヘラ塗り、※盛の8種類を、1点盛に関してはグリスの量をわたしの思う標準と少なめの2通りを試しましたので計9通りの比較をしていきます。
なんでこんなに塗り方があるのか気になる人向けに少し説明すると、1点盛はIntelが推奨する塗り方で一番シンプルな塗り方なのですが、CPUクーラーの装着圧で塗り広げる方法のためCPU全体にうまく広がらない可能性があります。なので広がってほしい場所や広がりにくい場所にグリスを追加することでグリスをうまいこと全体に広げようという考えからこんなにもたくさんの塗り方が生まれたんだと思います。
1本盛はCPUのダイの位置を重視した塗り方。
2本盛はCPUの4隅までしっかり届かせたい塗り方。
3本盛はそのどちらも満たしたい塗り方。
5点盛やX盛、※盛は2本盛や3本盛では空気が入りやすいのではないかという懸念を回避する方法です。
ヘラ塗りだけは他の方法と大きく異なり、「あらかじめCPU全体に均一に塗り広げておけばいいじゃん」という方法になっています。ヘラ塗りは一見完璧な塗り方に見えますが手間がかかるのと、上手に塗り広げないと逆に空気が入りやすいという意見もあるため、好みが分かれています。これら以外にも塗り方は存在していますがあまりにも聞いたことがない塗り方だったりネタ要素が強めかなと思ったため今回はわたしが聞いたことのあったこれらの塗り方を比較していきます。
検証に使ったPC構成
今回検証に使ったパソコンの構成はこんな感じになっています~
グリスは何度も塗りなおすのでEVERCOOL製のTC-200というコスパ重視のグリスを選びました。
CPUクーラーはねじ固定でしっかりと着圧のかかる虎徹MarkⅡとプッシュピンタイプでやや着圧の弱いHyperTX3EVOの2種類で検証しました。それぞれ動画内では以後虎徹とTX3と呼ばせていただきます。
室温は25度でベンチ台での測定ですが、どの程度差がでるのかの比較にはなるかと思います。
テスト内容
テストはアイドル時、ブラウジング(ネットブラウジングや動画再生などの軽い作業)、軽いゲーム代表としてDQ10、一般的な負荷のゲームとしてFF14とFF15を、CPUの負荷テストとしてCinebenchR20で温度を測定しました。ゲーム設定はすべてフルHDのウインドウモードで最高画質の設定です。
各テストの間はしっかりと温度が下がるまで時間をおいています。
テストはそれぞれ3回ずつ測定しもっとも良い結果のものをグラフにしました。
アイドル
それではさっそくアイドル時から見ていきましょう。
左が虎徹で比較したグラフ、右がTX3で比較したグラフです。それぞれ中央値の温度と最大時の温度をグラフにしました。アイドル時はこのようにバックグラウンドタスクによって温度や消費電力が大きくぶれることがあります。こういったイレギュラーな大きくずれた数値の影響を少なくするため、平均値ではなく中央値を用いています。
平均や中央値だけではグラフがさみしかったので一応最大値もグラフに入れていますが、今説明した理由や瞬間的な負荷は計測ソフトで測定ができないため最大値は参考程度に見てください。
消費電力は中央値で約10W、最大は13~21Wです。
虎徹のほうは中央値で最低が31.0度、最高でも32.0度とほとんど差がないですね。TX3のほうは中央値で最低が32.0度、最高で34.0度です。CPUクーラーの差分全体的に1~2度温度があがっていますが大きな差ではないですね。
ブラウジング
つぎはブラウジングです。
ブラウジングもアイドル時同様中央値と最大値をグラフにしました。
こちらも大きくずれが生じやすいため最大値の比較はあまり参考にならないかと思います。消費電力は中央値で約20W、最大は42~55Wです。
虎徹の方は中央値で最低が34.8度、最大で36.6度、TX3のほうは最低が37.3度、最高で39.3度でした。アイドル時とどうよう大きな差はないですね。
DQ10
そしてつぎはDQ10。
こちらは平均値と最大値をグラフにしました。
消費電力は平均値で約33W、最大値で43~53Wです。
虎徹の方は平均値で最低が47.4度、最大で48.4度、TX3のほうは最低が49.8度、最大で51.4度でした。消費電力の分温度は上がっていますがやはり大きな差はないですね・・
FF14
つぎはFF14。
こちらも平均値と最大値をグラフにしました。
消費電力は平均値で約50W、最大値で62W~66Wです。
虎徹の方は平均値で最低が51.7度、最大で52.9度、TX3のほうは最低が57.0度、最大で58.4度でした。CPUクーラー間の差がやや開いてきましたが、塗り方による差は相変わらず大差ない結果ですね。
FF15
つぎはFF15。
こちらも平均値と最大値のグラフです。
消費電力は平均値で約64W、最大値で90~106Wです。
虎徹の方は平均値で最低が56.5度、最大で58.4度、TX3のほうは最低が61.4度、最大で63.9度でした。
Cinebench R20
最後にCBR20です。
こちらは中央値と最大値をグラフにしました。
ベンチマークを周回する際にどうしても負荷が下がるタイミングがあるため、平均値ではなく中央値を用いています。
消費電力は中央値で150~155W、最大値で151~159Wです。
虎徹の方は中央値で最低が76.0度、最大で78度、TX3のほうは最低が87.0度、最大で90.0度でした。最後の最後で差が3度まで開きましたね。
テスト結果のまとめ
ここまではテストごとに見てきましたが、これでは結局どの塗り方がいいのか分からないので全ての結果を表にまとめましました。
虎徹
まずは虎徹から。
この表にはそれぞれのテストの中央値もしくは平均値とCBR20の最大値をまとめてあります。一番下の値はテスト結果を平均したものです。平均でみると一番温度が低かったのはへら塗りで53.9度。一番高かったのは2本盛で55.1度となりました。温度で見るとたった1.2度の差でどの塗り方もそんなに変わらないじゃんってなると思いますが、ここで少し見た方を変えてそれぞれのテスト結果を順位づけしたもので見てみましょう。
それがこちら。
こうやってみるとへら塗りが多くのテストでいい結果を残しているのがわかりますね。一番下に順位を平均したものをのせてありますがほかの塗り方よりも明らかにいい結果だったのがわかります。へら塗りに続いてよかったのは※盛で、その次に同率で1点盛(少)・5点盛・X盛でした。一方で順位が悪かったのは2本盛や1本盛で温度で見ると大きな差ではないのですが、全体的に温度が高くなる傾向でした。
TX3
項目は虎徹と同様です。
平均で見ると一番低かったのはへら塗りで59.2度。一番高かったのは1本盛で61.0度となりました。温度で見るとやはり1.8度と大きな差とまではいえませんので、こちらも順位も見てみましょう。
順位で見るとこちらでもへら塗りが一番いい結果を残していますね。続いて※盛、そしてX盛の順でした。順位が悪かったのは1本盛や3本盛で、先ほどの虎徹の結果も含め考えると〇本盛は他の塗り方よりも温度が高くなる傾向にあるようです。
塗り方による差はわずかな差ではありましたが、それぞれの特徴は出ていたかなと思います。
今回の結果から一番いいのはやっぱりへら塗りかなと思います。若干の手間はかかりますが、自作はこういった細かなこだわりを楽しむのも醍醐味ですので、今まで別の塗り方だった人もぜひ1度はへら塗りに挑戦してみてください。
それでもどうしてもへら塗りは面倒臭いという人には1点盛をおすすめします。
どんな塗り方にも共通したことなのですが、グリスがちゃんと塗れているかどうかはCPUクーラーを外してみるまでわかりません。わたしも初めての塗り方がたくさんあったので何度も塗り直して適切な量やグリスの伸び方をなんどもチェックしました。結果、基本的にへら塗り以外ではグリスが過多になりがちです。特に3本盛や※盛にいたっては量を減らそうと頑張ってみましたが、量が多くなってしまいはみ出すグリスがどうしても多くなってしまいました。
もし不注意に外すとグリスがマザーボードのソケット部分などよからぬところに垂れてしまう恐れもあります。その点1点盛であれば量の調整がしやすく、たとえ多少量が足りていなかったとしても今回の結果では大きな差にはつながっていません。もちろん4隅までしっかり広がりづらいというデメリットはありますが、どんな塗り方にもメリットとデメリットがありましたので、その中で1点盛がかなりバランスのいい塗り方かなと思いました。さすがIntel推奨ですね。
まだまだ動画は続きますが今回のテストでわたしがたどり着いた結論は
「好きな塗り方で大丈夫」です。しいて言うなら、丁寧に組みたてたい人にはへら塗りがおすすめ。手間をかけたくない人には1点盛がおすすめです。
ここからはより詳しく掘り下げてみようかなと思いますので、もうおなかいっぱいって人はこれだけ覚えていってください。
さらに詳しく知りたい方はこちら!
それではここからはもっと詳しく知りたいという人向けにより細かなところまで見ていきます。ただ先ほどの結論は変わりませんのでそのことを念頭にお聞きください。
まずはCPUクーラーを外した後のグリスの状態を順に紹介します。左が虎徹で右がTX3の写真です。クーラー側はひっくり返した状態ですので上下を反転するとCPU側に一致します。
1点盛
まずは1点盛から。虎徹に関しては右上の隅以外はしっかり伸びていますね。ただ真ん中あたりはしっかりあたっていますが、周囲ではややあたりが弱い印象です。一方でTX3ではかなりむらがあり、4隅まで伸びきっていませんでした。このクーラーはヒートパイプの走行に合わせて溝があるため、その溝に誘導される形で伸びてしまっている印象でした。また虎徹と比較して全体的にグリスの厚みがありますね。グリスの量はできるだけ同じになるようにぬったつもりですがここまでの差がでました。
1点盛(少なめ)
つぎに1点盛(少)です。虎徹に関しては着圧が強いため意外と伸びていますね。さすがに4隅までは届いていませんが、その分グリスの厚みが薄いからなのか虎徹の場合は適正量よりも0.2度いい結果になっていました。一方でTX3ではやはりヒートパイプにそって伸びてしまい、これで大丈夫だったの?wってさすがに思っちゃいました。それでも最大で1度ほどしか差がなかったことを考えると、グリスによる影響よりもCPUクーラーの冷却性能の限界が浮き彫りになった結果だったんではないでしょうか。
1本盛
つぎは1本盛です。虎徹のほうはだいぶグリスが右に寄ってしまった印象ですね。左上の隅には届いていないところもあります。TX3の方はやはり左右にあまり広がっていませんね。グリスが上下にだいぶはみ出してしまいました。
2本盛
お次は2本盛。虎徹の方はこちらも少し右側のグリスが分厚く見えますね。TX3の方は今までの塗り方よりもしっかり広がっている印象です。ただやはりヒートパイプ・・
3本盛
つぎは3本盛。虎徹はこちらも右側のあたりが弱いようですね。ただ先ほども少し触れましたが、何よりもグリスが多過ぎます。はみ出たグリスをきれいにふき取るのがすごく大変でした・・。TX3の方も比較的しっかり広がっていますがやはりグリスが多いです。
3本盛ともなるとグリスの標準的なシリンジの先で適切な量を塗るのは難しいかもしれません。
5点盛
つぎは5点盛。虎徹の方はかなりきれいに広がっていますね。TX3の方も比較的きれいに塗れていました。何回か塗り直しましたがどれもきれいに広がっていたので、へら塗り以外だと一番安定して広がる塗り方かもしれませんが、温度に関しては1点盛とほとんど変わらなかったため、じゃぁ1点盛でいいじゃんとなりました。
X盛
続いてX盛。虎徹に関してはこれもきれいに塗れていますね。TX3のほうも十分広がっているとおもいます。ただやはり温度がそこまで変わらなかったので1点盛が楽でいいですよね。
へら塗り
そしてへら塗り。最初から塗り広げているだけあってどちらもきれいに広がっていました。
きれいに塗るにはマスキングテープとへらが必要ですが、マスキングテープはセロハンテープでも代用出来ますし、へらはプラスチック製の固めのポイントカードの端をセロハンテープで保護すればカードを汚さず代用可能です。とっさに出先でグリスを塗ることになったときに役立つかもしれません。
※盛
最後に※盛です。※盛もへら塗り同様どちらもきれいに広がっていますね。ただ量に関してはちょっと多い気がします。広がり方を考えると5点盛や※盛はきれいなのですが、やはり温度にそこまでの差がないため結局1点盛でいいのかなとは思います。
グリスの状態についてはこのあたりで、ここからはグリスの量についても考えてみましょう。
グリスの量
グリスの量に関しては本音を言うと何回か試し塗りしてはみ出し過ぎないように調整するのが一番だと思います。
CPUにも形や大きさがいろいろありますし、グリスの硬さやクーラーの着圧の強さによってもちょうどいい量というものは変わってきます。パーツ同士の組み合わせによって接触の強い部分、弱い部分もどうしても生じてしまいますので何度かトライして実際に目で確認するのが確実です。
実際今回の検証でもへら塗り以外では塗るたびに広がり方や温度が変わっていました。一番いい結果のものだけをまとめましたが、同じ塗り方でもいいときと悪いときでは最大で3度差がついていました。グリスの量なのか、装着時のぶれなのか、はたまた負荷テストによる誤差なのかわかりませんでしたが、塗るたびに温度が変わるのでは安定した塗り方とはいえないので、安定感の面でもやはりへら塗りが一番いいのではないでしょうか。
適正量は米粒大や豆粒くらいと昔から言われていますが、お米でも炊く前か炊いた後かで大きさは変わってきますし、米粒と豆粒はかなりサイズが違います。
ためしに家にあった穀物類のサイズを写真でとってみましたが、この中で個人的に適正量に近いなと感じたのは小豆です。お米だとちょっと少ないかなと思います。少ない状態でも温度に大きな差はありませんでしたが、グリスは時間経過とともに劣化していきますので、長期的な運用を考えると接触面は広いに越したことはないんじゃないでしょうか。
ちなみにわたしが適正だと思う量で重さも計ってみたのですが、0.2gでした。ただ料理用の量りなので0.1gまでしかメモリがなく、また比重がグリスごとに大きく異なるため計っては見たもののあまり参考にはならないかもしれません・・
ヘラ塗であればマスキングテープの厚みで均一に塗り広げられるためグリスの量もあまり気にしなくていいのがメリットだと思います。
結論
長々とみてきましたが、結論はやはり「好きな塗り方で大丈夫」です。
わたしも本組ではへら塗りをしていますが、動作チェックではCPUの大きさに合わせて1点盛や5点盛を多用しています。ぱっと塗れてグリスの無駄も少ないので重宝しています。
CPUやマザー、クーラーにはかなり強い力がかかるため多かれ少なかれ変形が生じます。Intelのソケットの仕様(LGA1150)ではクーラー装着時には311N~822Nの力がかかるとされています。Kgに換算すると約32kg~84kgなのでかなりの力がかかっていますね。
これだけの力がかかれば多少なりとも変形はしているはずで、その変形や表面の凸凹を補償するのがグリスです。今回の結果ではどの塗り方でもその役割をしっかりとこなしているといえるんじゃないでしょうか。
個人的にはへら塗り推しですが、やはり手間がかかるというのは大きなデメリットになります。温度で見るとどの塗り方も大きな差ではありませんでしたので、慣れている塗り方があればその塗り方で問題ないと思います。
ただし今回の結果はあくまでもわたしの検証環境下での結果です。CPUも消費電力が低いCPUではありませんが、さらに消費電力の大きいCPUもたくさん存在します。構成が変わればもちろん結果も変わりますので、200W、300Wと消費電力が大きくなると多少差は広がってくるんじゃないかなと思います。
この動画・ブログでさらに興味がわいたかたはぜひ自分の構成にあった塗り方を研究してみてください。
グリスの塗り方比較はこの辺で。次回はグリスによる違いを見ていきたいと思います。
素晴らしい検証です。自分の人生でCPUに載った豆と米を目にする日が来るなんて思ってもみなかったです。大変参考になりました。
コメントありがとうございます。
検証しながら真面目に遊んでいたと思いますw
嬉しいお言葉ありがとうございます!