パソコン検証編Part.1-3 「SSD検証レビュー 第3回」
SSD検証編の第3回。今回はデータドライブとしての性能を見ていこうと思います。
テスト環境は第1回から同様です。詳しくは第1回の動画を見てください。
SSDにコピーした4種類のファイル
データドライブとしての性能を見るために980PROをシステムドライブとし各SSDに4種類のファイルコピーテストを行いました。
テストの1つ目は動画データのコピー。大きなファイルのコピーを想定したテストで、20ファイル97.9GBのコピーを行いました。1ファイルあたり平均5GBほどのファイルです。
2つ目は音楽データのコピー。音楽や写真のRAWデータのようなサイズのファイルコピーを想定したテストで、5365ファイル101GBのコピーを行いました。1ファイルあたり平均20MBほどのファイルです。
3つ目は画像データのコピー。SNSでも送信できる比較的小さなファイルのコピーを想定したテストで、100607ファイル105GBのコピーを行いました。1ファイル当たり平均1MBほどのファイルです。
そして4つ目。最後はゲームデータのコピー。様々なサイズのファイルコピーを想定したテストで、1830ファイル238GBのコピーを行いました。1ファイルあたり平均140MBほどのファイルですが、数KBのファイルから数GBのファイルまでいろんなサイズのファイルが含まれています。
テスト時のSSD使用率の変化はだいたいこんなかんじです。開始時約20%→動画→30%→音楽→41%→画像→53%→ゲーム→78%終了 マイコンピュータのアイコン作って
最後のゲームデータの書き込みにいたっては使用率が50%を超えてからの書き込みテストのためかなり現実的な結果が出るんじゃないかと期待しています。
テストはシステムドライブのSSDをCPU直下のM.2スロットに装着し、データドライブのSSDはチップセット側のスロットを利用しました。チップセット側はヒートシンクがないためジョンズボ社製のヒートシンクを装着して測定しています。標準でヒートシンクがついているS50Liteは標準ヒートシンクの上に追加する形で装着しました。
時間と速度
それでは結果を見ていきましょう。
~お詫び~
第1回でも説明しましたが、980PROのファイルコピーテストだけSN750からのコピーとなっています。そのため他のSSDとはテスト条件が異なり単純な比較はできませんのでご了承ください。
まずは全体の結果から。
この表はそれぞれのコピーにかかった時間です。時間だと比較がしにくいのでファイルサイズから平均の転送速度を求めてみました。それがこちら。
グラフも作ったのですが私は数値のほうが比較しやすいと感じるので少し小さくなりますがどちらも並べてみていきます。
まずは全体の傾向から。
この結果だけ見るとすべてSSDにしてしまいたいと思うほどSSDが高速なことが分かりますね。SSDが広く普及してきた今ではSSDが速いというよりHDDが遅いという表現の方があっているのかもしれません。
そして特徴的なのは上位モデルの強さですね。今回の検証では980PROとSN750が上位モデルにあたるのですが、ほぼすべてのテストでトップクラスの速度を記録しています。特にゲームデータのような大容量のファイルコピーでもしっかり速度がでているのはさすがですね。こういったところで上位モデルと下位モデルの差が大きくでていますね。
上位モデルは単に高速なだけでなく突出した欠点がないのが特徴かもしれませんね。
他にも私が気になったのはS50Liteの動画データ。CDMではすぐに速度低下を起こしてしまい、あまりいい印象のないS50Liteですが、今回のテストでは素晴らしい結果を残しました。
ただよかったのは動画データだけでそれ以外のテストではそこまで速度が伸びてません。これについては後ほど詳しく見ていきいます。
もう一つ特徴的なのがP1のゲームデータ。本当にSSDなのかと疑いたくなるほど遅い結果となってしまいました。HDDに近い速度しか出ず、HDDが高速なモデルだったら負けてしまうのではないかというレベルでした。なぜこのような結果になったのかも後ほど詳しく見ていきます。
その他にもいろんな結果がでていますが、この表では速い遅いの比較しかできないため、ここからはモデルごとにもう少し掘り下げてみていきましょう。SSDごとに速度の推移をグラフにしてみました。
SSDをモデルごとに見た結果
980Pro
まずは980PROから!グラフはこんな感じです。
グラフ右側のほぼ速度が0で推移している部分があるのですが、ここは書き込み後のガベージコレクションやウェアレベリングが行われているであろう部分です。右端がこれらの高速化の処理が完了したであろう時間になっています。この部分に関しては憶測によるところが大きいため参考程度に見てください。
980PROはCDMほど速度が伸びなかったなぁというのが正直な印象です。ただこのテストだけコピー元がSN750なのでSN750の影響なのか980PROの特徴なのか断言はできませんが、他のSSDと比較してテスト時のSSD負荷が低かったためSN750の読み込みが先に限界となり、本来の速度が出ていないのではないかと思います。そしてグラフにも著明に表れていますが、速度のブレがかなり大きかったのが気になるところ。わたしはSLCキャッシュをやりくりしているため速度がぶれるのではないかと考えていますが実際のところはどうなのでしょうか。速度は十分なレベルで速いのでほとんどの人には問題にならないと思いますが、もし4KのRAW動画を扱うなど一定以上の速度を必要とする場合には、この波の遅い部分での速度が、求める速度以上である必要があるため、用途によっては注意しないといけないところかなと思います。そうはいっても遅いときで1.6GB/sを超えているのでやっぱり問題になることはほとんどないんじゃないかなとは思いますが・・。あとやはり少し温度が高めなのが気になります。速度は速いためコピーが短時間で終わりすぐ温度が下がり始めるのが救いですね。
気になるところはあるものの980PROのデータドライブとしての性能はかなり優秀なのではないでしょうか。
S50Lite
つぎにS50Lite!グラフはこんな感じです。
S50Liteは非常に興味深いグラフになりました。右の音楽データやゲームデータのグラフを見てください。多少のブレはあるものの速度が何段階かに分かれているのが分かるとか思います。わたしはこの結果をみるまでSSDの速度はSLCキャッシュを利用しているときとキャッシュが切れているときの2段階だけだと思っていましたが、この結果からは何段階もあることがわかります。結果を詳しくみたところ約55GB書き込むごとに速度が落ち、最終的に250MB/sくらいで安定しそれ以上は速度が落ちることがないようです。いろいろ調べましたがわたしの知識ではなぜ何段階にも分けて速度が落ちるのかはわかりませんでした。このSSDに使用されているNANDは公表されていないため、採用されているNANDがQLCでさらにSLC技術による各モード変更に対応しているのかな?とかも考えたりしたのですが・・。
QLCNANDって250MB/sも出るの?だとか動画データではなんで速度低下しなかったの?とか永遠に疑問が浮かんできて正直お手上げです。S50Liteは本当に謎の多い製品ですねw
ところでみなさん、このSSD検証編第1回のCDMのテストで64GiBのテストだけ理想的な結果が無かったのを覚えていますか?
その原因がこの速度低下です。64GiBのテストではテストファイルの準備だけで55GBを超える書き込みがされているため、テスト本番ではすでに速度制限がされてしまっていたのだと思います。何度テストしてもカタログスペックのような数値にならなかった謎がここで解けました。
グラフに戻りましょう。他にも気になる点は温度です。
最大温度は70℃を超えています。大型のヒートシンクを追加で装着してこの温度ですので、標準ヒートシンクでは確実にサーマルスロットリングをおこし、この結果よりも低速な結果になると思います。通常標準装備のヒートシンクを外してしまうと保証が切れてしまうため、データドライブとしてはちょっと扱いにくいですね。
そして高速化の処理がかなり長いこともわかります。このSSDは次の書き込みまでかなり時間を空けないと高速な書き込みができないため、この高温が続いている部分はガベージコレクションやウェアレベリングが行われていると考えて間違いないと思いますが、とにかく長いです。
先ほどのキャッシュ切れによる速度低下をどうとらえるかにもよりますが、やはり温度が高いことやSSDの高速化処理が長いことを考えるとデータドライブとしてはいまいちかなといった印象でした。
SN750
つぎはSN750のグラフです。
まず特徴的なのがこれまで見てきたSSDのグラフと比べてとても安定したグラフになっている点ですね。若干のブレはありますが安定した高速書き込みができていることが分かります。書き込みの始めには少しだけ高速な部分がありますが約15GB書き込むまでしかこの速度はでないため非常に限局的です。これはWDの特徴でSLCキャッシュの扱いが他のメーカーと異なります。多くのメーカーがSSDの大半をキャッシュ化してキャッシュをうまくやりくりしながら書き込む可変SLCキャッシュなのに対し、WDでは容量のごく一部をキャッシュとして利用し、キャッシュから溢れた分はキャッシュを使わずにそのまま書き込む固定SLCキャッシュです。
どちらがいいかは用途次第ですが、可変のもでは速度のブレが生じるためCDMのようなベンチマークソフトではどの程度の速度安定性があるのかはわかりません。キャッシュが多く高速な書き込み時間が長いのがメリットなのですが、キャッシュ容量はSSDの空き容量に左右されるため容量を使えば使うほど遅くなるというデメリットがあります。それに対し固定のものでは高速に書き込める容量はわずかですが、キャッシュをやりくりしないでいい分パフォーマンスが安定しているのが特徴です。どのみちCDMの数値はそのわずかなキャッシュ部分なのであてにはならないのは同じなのですが・・。どちらのほうが速いかはファイルサイズや空き容量・キャッシュ率など様々な要因に左右されるので、どっちのほうが速いとかはないと思います。重要なのは書き込み速度の安定性が必要かどうかですので、一般的な用途では可変か固定かはあまり気にしなくても大丈夫だと思います。
画像データに関してはどうしても速度のブレが大きいですが、今回検証したSSDのなかではトップの速度を記録しています。
速度・温度・安定性すべての面から見てSN750のデータドライブとしての性能はとても優秀ですね。
SN550
次はSN550。
先ほどのSN750の弟分てきなモデルなだけあってSN750の速度を落としただけのそっくりなグラフになりました。高速な書き込みが約12GBまでだったりと細かな違いはありますが、SN750同様書き込みは非常に安定していますね。特段速いといった感じではないですが、ほかのSSDと比べて発熱が少ないのが特徴的です。データドライブとしては十分な性能があると思います。
P1
次のグラフはP1のグラフです。
P1もまた特徴的なグラフになっています。どのグラフも途中からほぼ横ばいのグラフになっていますね。そしてこの横ばいの部分が非常に低速です。QLCNANDが遅いといわれている部分がここに見て取れますね。P1も速度が落ちるまではブレがあるものの1.5GB/s以上の非常に高速な書き込みができるのですが、約96GB書き込むとなんとHDD以下の約120MB/sまで速度が落ちてしまいます。ゲームデータのコピーが著しく遅かったのはこれが原因です。他のテストでも途中で速度は落ちていますが、データ総容量が100GBちょっとだったため低速での書き込み時間が短く、ゲームデータほど顕著な結果にはならなかったということです。つまりこのSSDはキャッシュ切れを起こす約96GBという容量がキモとなります。96GB以下の書き込みであれば980PROやSN750と同等以上の性能がでます。しかし96GBを超える書き込みでは総容量が増えれば増えるほど時間がかかるようになり、最終的にはHDDよりもコピーに時間がかかるといったことが起こりえます。
そしてP1もS50Lite同様ウェアレベリングが非常に長いです。キャッシュ切れをおこす容量の壁をどうとらえるか次第ですが、キャッシュ切れ後の速度が非常に低速なのとウェアレベリングが長いことからデータドライブとしてはいまいちかなと思います。
ただ、どうなんでしょうか?わたしは96GBを超えるデータを日常的に書き込むようなことはあまりなく、たまに大容量のデータを扱うときも基本的にバックアップが目的なので、数百GB~数TBと桁違いにサイズが大きく、費用的にもHDDを選んでしまいます。最近のゲームは100GBを超えるものがたくさん出てきていますが、ダウンロードに関してはそもそもネット側の速度に引っ張られるため120MB/sですらオーバースペックになります。クリエータ用途ならまだしも一般的な用途で96GBを超えるデータを日常的に書き込むなんて思いつかないのですが・・・
SATA
つぎはSATAのSSDです。
WDのほかのSSDと比較すると速度のブレが大きいのが気になりますが比較的安定しているんじゃないでしょうか。ただ安定しているというよりは通信の制限から一定以上の速度がだせずに頭打ちになっているといったほうが正しいのかもしれません。速度は速くはないですが発熱はかなり少ないので、発熱を抑えたい場合にとても向いているSSDです。
HDD
そしてHDD。
テスト時間が長いので速度のブレでグラフがえらいことになっていますが、横長に引き延ばすわけにもいかないので大目に見てください。速度面ではさすがにSSDには完敗ですね。ただやはりHDDといえばコスト面で圧倒的な強みがあるので速度に関しては目をつむりましょう。メリットは温度が低くほぼ一定なところ。数百GBくらいの書き込みではほとんど変化しません。デメリットも多いですが、メリットもあるのでやはり用途にあわせた使い分けが重要です。
温度
最後に温度をまとめてみました。
この温度は各テスト開始からその後の高速化処理が終わるまでの間の最高温度です。
Gen4対応のSSDは温度が高いですね。一方でSATAのSSDはヒートシンクをつければ大50℃以下に収まっていますので、ヒートシンクなしでも十分運用可能なレベルだと思います。
この結果は検証台上でATXマザーを使用しSSDにはコピー以外の負荷はかかっていない状態での温度ですので、実際の運用ではもう少し温度が高くなると思います。マザーボードによってはグラボの直下にM.2スロットがくることもありますし、Mini-ITXマザーの場合M.2はチップセットとグラボの間に挟まれることになりますので、あまり負荷がかかっていなくても60℃弱になったりもします。グラボとストレージに同時に負荷をかけるとどう頑張ってもサーマルスロットリングが避けられない場合もありますので、データドライブとして使う場合は構成に合わせた製品選びをしていきましょう。
まとめ
第3回はデータドライブとしての性能を見てきましたがいかがでしょうか。
モデルごとに特徴がはっきりと表れていましたね。CDMの数値だけでは分からなかったこともたくさん見つけれたかと思います。データドライブとしてSSDを使う場合はどれくらいの書き込みを行うかと、どれくらいの速度が必要になるのかが重要になりそうです。頻繁に大容量の書き込みを行わないのであればエントリーモデルでも大丈夫ですが、大容量の書き込みを高速で行いたいのであれば多少高くても上位モデルを買ったほうがいいですね。
購入前に一度考えてみてください。本当にそんな速度必要ですか?もちろん速度が速いに越したことはないですが、高速なSSDの一番大きな恩恵はいままでRAIDを組まないと速度が足りなかった用途にも単体のSSDで対応できるようになったことだと思います。一般的な用途ではどのSSDも十分すぎるほど高速ですので、あまり神経質にならずその分の予算を容量や他のパーツに回すことも考えましょう。
この検証編はわたし個人の考察です
見解は人それぞれですし、用途によって製品に求めるものは変わってきます。
なかなか同じ条件で比較できるデータを見つけることは難しいと思うので、この動画・ブログの検証結果を参考に自分なりの最適解を見つけてください。